OUR FUTURES

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プロジェクト 「 福山未来共創塾

から投稿されました。

2018年12月8日開催
【福山未来共創塾】クロージングセッション&トーク:開催レポート


 行政と市民の「共創」の場を行政が作り、参加し、マルチセクターのチームでプロジェクトを創出して進めていく。「福山未来共創塾」は、そんな全国的にも珍しい取り組みにもなったのではないでしょうか。
9月のオープニングセッションから10、11月と毎月開催され、今回12月8日の最終回と、全4回の塾では毎回新しいチームが作られ、「新しいシゴト」を生み出してきました。

 それはただアイデアをひねり出すだけではなく、フォーマットを使ってアイデアを構造化することで、「プロジェクトのWHY」を徹底的に掘り下げるところから、具体的なアクション、具体的な「一歩」を踏み出すまでの一気通貫したアウトプットとしたセッションであることが大きな特徴のひとつです。
最終回となる今回は、回を重ねて参加されてきたリピーターと、新規や2回目の参加者が入り交じることで、良いリフレクションと化学反応が生まれ、上記のような共創塾の真価が発揮された回となったといえるのではないでしょうか。

 また、最終セッションのあとは、フェアトレードの世界の第一人者であり、京都市が主宰するイノベーション・キュレーター塾の塾長を務める高津玉枝氏の講演があり、一歩を踏み出すために必要な心構えやエッセンスが語られました。


■再び「自己」へ

 冒頭、ファシリテーターを務める、一般社団法人企業間フューチャーセンター:フェローであり、福山を中心に未来創造の場を展開する任意団体FutureCenterFukuyama(FCF)代表の小野眞司氏から、本塾についての説明がありました。

・目的は、よりよい未来につなぐ「新しいシゴト」を始める第一歩を作り出すこと。
・「対話」を重視し、多様性の中から未来を描き出す。
・バックキャストで最初の一歩を探り出す。ことなどが確認されました。

 また、今回は枝広直幹市長が来場し、開会にあたり本塾への期待を改めて語られました。

「2018年2月に100人委員会が30年後の未来図を発表しました。今度は次のアクションを踏み出すべき時に来ています。
 今、まちづくりは、官民の『協働』から、マルチステークホルダーによる『共創』へと新しい段階へ来ていると思います。全国でもまだ例のない取り組みですが、今、こうしてその先鞭を付けているのが皆さん。今回も、そんな思いを持って、実りのある議論をしていただきたい。
『協働』という言葉には、『行政はここまでやる』『ここからは民間でお願いね』というような無意識の役割分担が前提にあるように思えます。
しかし、これから地域を維持していくには、そのように役割を分担するのではなく、すべての人が自分ごととして取り組む必要があるのではないか。『共創』とはそのための方法、プロセスなのだと期待しています。」(枝広市長)







 

 そして本番のセッションに入っていきます。
 毎回、ユニークなアプローチ方法でプロジェクト創発に取り組んできたのが福山未来共創塾の特徴です。前回のセッションでは「人」にフォーカスして自身のやりたいこと、マイテーマ、プロジェクトを問い直しましたが、今回は再び「自分」をテーマに掘り下げを行います。

「『どうしてそれをやりたいのか』というWhyから、さらにもうひとつ深いところに降りていき、言葉にならない思い、言語化できないモノを自分自身の中から掘り起こしていくことにチャレンジしていきたいと思います。」
と小野氏。 


毎回参加者には、申込み時に「マイテーマ」としてやりたいこと、取り組みたい内容を提出してもらっていますが、今回のセッションでは、それをさらに掘り下げ、「本当に大切なこと」「本当に実現したい未来」を共有していくことで、新しいプロジェクトとして再結合させることにチャレンジします。

 通常、こうしたワークショップでは何をやるのか=Whatが中心になりがちですが、なぜやりたいと思うのか=Whyを、「誰の笑顔を見たいのか」と対象となる人を通して掘り起こしたのが前回のワークなら、「自分自身」の深みにもう一度迫るのが今回。
 多分それは、人格形成の核となったに違いないであろう体験や、忘れたくない大切な思い出、逆に忘れたいと思って封印していた思い出を掘り起こす旅のような対話になるかもしれません。

「このセッションはリフレクション(反射)による内省のセッションです」と小野氏。

「言葉にならない思いを掘り起こすので、つらい、触れたくない部分にも触れてしまうかもしれません。考えもしなかった思いが、つい言葉となって出てしまうことがあるかもしれません。でも、その言葉は、私達の思いを代表したものなのです。」

デリケートな内容に踏み込むこともあるため、小野氏からワークを進めるうえでの注意点がありました。
・みんな違って、みんなOK
・思いや感情を出すことを厭わない
・その人の立場や背景を想像し慮る
・今日の話は、今日この場だけ
・距離をおく、離脱するのもOK
「他では話せない、秘密の話も出るかもしれません。だから、今日のこの場で出た話は、今日この場限りのもの。また、しんどくなることもきっとあると思います。そういうときは、無理せずにテーブルから離れて休んでいただいても大丈夫です」(小野氏) 

また、今回はオープニングセッションでもご活躍いただいたアオナミさんによるグラフィックレコーディングも行われていきます。


■2つの問いで自分を掘り下げる

具体的には用紙にマイプロジェクトを書き出し、そこを起点に一人ひとりの時間をかけて、
1.本当に大切なことを探る。本当に実現したいことを見つける問い。
2.私やチームに必要なもの、欠かせないものを見つける問い。
の2つのアプローチで丁寧に思いを掘り起こしていく対話となります。 


まず1人がオーナーとなり、マイプロジェクトを説明するところからスタート。
テーブルについた他のメンバーは、「なぜそれをやろうと思うのか」「きっかけは」「それでどの様にしたいの?」などの問いかけをし、オーナー自身が答えることで自身の内部へ降りていく対話です。サポートツールとして、代表的な質問カードが15問入っており、必要に応じて使うことができるようになっています。

 1人に対して問1、2で考えを深めたら、オーナーの方には気付きやリフレッシュされた考えなどを用意した「気付きのシート」に記入する時間を取ります。その間、他の人からは、応援メッセージや支援できること、提案やアドバイスをその人に贈るようにします。

 これを全員が一人ずつ順番にオーナーとなって、メンバーもテーブルを移りながら行っていきます。

 このセッションは粛々と進められ、それぞれの胸の内が吐露されたことと思いますが、傍で見ていて今までのワークと違うなと感じたのは、参加者皆さんの手の動きが激しかったということでした。  


   「心余りてことば足らず」という言葉がありますが、人は伝わらない思い、言葉にならないモノを伝えようとすると、不思議と身振り手振りが増えるもの。「伝えたいのに伝えられない、言葉にできない」、そんなもどかしさが、その手から伝わってくるような気がしました。


■プロジェクト立ち上げ、チーム編成へ

 休憩をはさみ、後半はプロジェクト構築に立ち上がりたいオーナーを募り、チームを編成し、具体的なアクションプランまでを立てる作業へ移ります。
今回は、6名の方がオーナーとして名乗り出られ、取り組みたいテーマやアイデアの概要を発表します(発表順)。

1.ふくやまサイクルシティ
 しまなみ海道のゲートウェイとして、自転車にやさしいまちをつくる。

2.自然の中に科学と歴史のハーモニー ふくやま科学未来館
  福山市からノーベル賞受賞者を輩出することを目的に教育の底上げを図る。

3.砂留女子創出
 江戸時代に作られた日本最古の砂防ダム「砂留」を盛り上げるための施策。

4.人が社会がつながるあったかデジタル社会
 デジタルとリアルな場の両輪で地域交流の機会を提供するプロジェクト。

5.地域活性化推進システムフロアーシェアプロジェクト
 ビルのフロアを「シェア」し、地域の高齢化問題などに対応していく。

6.誰もが気軽に集える居場所作り 『まちの駅』プロジェクト
 リアルな交流拠点を街の中に創出する。

 参加者はオーナーの声を聞いて参加するチームを決めていきますが、最初から決め込まず、あちこちの声を聞いて決めてももちろんOKですし、途中の移籍もOKです。最終的に各チームとも4~6名で落ち着き、最後のプロジェクトシートへのまとめに取り組みます。

  1時間でまとめていくために、おおまかに2Rの区切りをつけて「プロジェクト基本シート」「プロジェクト構成シート」を作り込んでいきます。

 プロジェクト基本シートとは、「なぜそのプロジェクトに取り組むのか?」 という理由と現状の背景を記し、プロジェクトの立脚点を明らかにし、その目的や対象となるターゲット、取り組む内容等、概要を固めます。
 プロジェクト構成シートは、具体的なアクションプランのベースになるものです。基本シートの「何をやるのか」を下敷きに、プロジェクトの実現に必要なリソースを浮き彫りにすることで、チームとしての最初の行動を促す仕立てになっています。


 そして1時間弱のワークを終えたあと、いよいよそれぞれのチームから発表があり一般社団法人企業間フューチャーセンター代表の塚本恭之氏、臼井清氏や、後に講演する高津氏とともに発表に対してコメントをいただきました。(1208:プロジェクトレポート)

 全チームの発表を終えて、小野氏は「ファーストアクションの計画を立てて」と呼びかけています。各チームとも最低限、最初のミーティングの日時は決めていますが、「現場に行き、観察することが大事」と小野氏は言います。また、「始めなければ何も始まりません」と、重ねて計画から実践への一歩を踏み出すよう呼びかけました。


 そして、福山未来共創塾はクロージングトークへと移ります。 


■クロージング・トーク「未来をつくる はじめの一歩」
高津玉枝氏    
株式会社福市代表取締役
京都市ソーシャルイノベーション研究所 イノベーション・キュレーター塾 塾長 

 未来共創塾、最後のクロージングトークは、株式会社福市でフェアトレードを手がける一方、京都市が主宰するイノベーション・キュレーター塾で塾長を務める高津玉枝氏をお迎えし、これから一歩を踏み出そうとする未来共創塾の皆さんへエールとアドバイスを語っていただきました。


講演タイトルはズバリ「未来をつくる はじめの一歩」。

上品で楚々とした見かけとは裏腹に、膨大な熱量と勢いに参加者の皆さんも圧倒され、一歩を踏み出すためのパワーをいただくことができたようでした。

この講演のみの参加も可能だったため、後半にはまた新たに参加者が加わっています。

「今日はみなさんの素晴らしいプロジェクトをお聞きして、今日ここから新しいことが始まるんだろうなと勝手に1人ワクワクしていました」と高津氏。この日の講演は自らの経験、ビジネスのことを中心に話すことになりますが、「その中から、何かひとつでも、ふたつでも捉えてお持ち帰りいただければ」と参加者に呼びかけます。


▼社会課題の本質を掴む 

 まず、最初に投げかけたのが「本質を掴むこと」の重要性です。
「社会の問題や課題を踏まえ、何かことを起こそうというときには、自分が取り組もうとしている問題の本質がどこにあるのかを見つめ直すことがとても重要です」と高津氏。

  例に挙げて解説したのが、2013年4月にバングラディッシュの首都ダッカで起きた死者1000人を超す縫製工場の崩壊事故です。この事故は、一斉にミシンを稼働したことで老朽化したビルが振動に耐えきれず崩落したという事故ですが、この事故の原因の本質には貧困があります。
(写真は2013年に起きたダッカの縫製工場ビルの崩壊事故(” Dhaka Savar Building Collapse” photo by rijans [frickr]


「数日前に、ビルに亀裂が入っていて警告が出されていました。しかし、1日でも休むと仕事を失ってしまうという状況のため、誰もその警告に従わなかったのです」

 さらにこの問題を深く探ると、安い労働力で生産したいメーカー企業があり、さらにその向こうには、100円でも安く買いたい消費者がいるのです。 

「私たち誰だって、1000円よりは500円のものが安くて買いたいと思いますよね。そういうものがどんどんエスカレートして今の状況がある。つまり、これは私たちの問題じゃないか?ということです。社会課題を考えるとき、工場が悪い、法律が悪い、国が悪いとか表面だけ見るのではなく、問題の本質まで深掘りしていくことが重要です」

 高津氏は、問題の本質に至らないまま取り組んでしまうと「結局同じ問題が起こることになる」とも指摘します。

「例えばこの工場の事故なら、工場や建物のあり方を是正すればいいとしてしまったら、結局、無理をしてでも働かなければいけないという貧困の状況はまったく変わらず、また同じ問題が起こることになるでしょう」
 また、問題の本質が自分たち消費者にあると気付いたことが高津氏の行動の原点になっていることも解説しています。
「この仕事をやっているのは、途上国で働く人の労働環境が悪くてかわいそう!という思いからではないんです。こういうことを、日本の消費者に伝えないと世界は変わらない。世界を変えたいというゴールを目指して取り組んでいます」


▼「はじめの一歩」の戦略とは 

そして、続いては「私の『未来をつくる はじめの一歩』」として、高津氏自身がどんな「一歩」を踏み出したのかを紹介。
それは1〜6まであり、「はじめの“一歩”なのにいくつあんねん!って感じですよね!?」と高津氏が自分で突っ込んだほどですが、これはつまり、どのように進めていったのかというプロセス全体と、どう考えて取り組んだのかという戦略の立て方を教えてくれたことにほかなりません。


1.取引先へ重要性を説いて回る
 女性が長く働ける環境を求めてゼロックスを退職し、マーケティングの会社を起こした高津氏。しかし、良いものを社会に提供したいという思いをとは裏腹に、当時の社会はデフレの時代で安価な大量生産・大量消費を促す方向で、そこに「モヤモヤを感じていた」と言います。そこでフェアトレードに出会い、「これからはこれだ!と思って、取引先に話して回った」そうですが、まったく反応がありません。
「当時はフェアトレードなんて誰も知らず、誰が儲かるの? チャリティじゃないの?という反応ばかりで、これはあかん、作戦を考えないと!と思って、皆さんがやったようにありたい未来から今やるべきことをバックキャストして考えて作戦を立てました。」
「フェアトレードで世界の貧困問題を解決したい」というゴールに対して、「フェアトレードを身近にする」→「流通が普通に扱う」→「一般の人に支持される」とバックキャストしていき、はじめの一歩として手を付けたのが「成功するお店をつくる。」
「これが私にとっての第一歩でした」と高津氏は言います。

2.会社を設立する/誰もが知っている商業施設にフェアトレードの売り場を作る/ビジネスとして運営する
 第一歩を始めるにあたって、ビジネスとして認められなければ社会にインパクトを与えられないとして、まずは会社を設立。そして、マーケティング会社時代からのコネクションのおかげで、名古屋のロフトにショップをオープンすることができました。しかしこれがいきなりの頓挫。「ロフトなんだからイケる!と思ったんですが、これがひどかった。1日の売上250円、がーん!なんて日々」。
「ここでの学びは、『正しいから売れる』ということはないということ。社会課題に取り組む人はそこをよく勘違いする。正しいから理解してもらえるんじゃありません。人は正しさでは動かないし、正しいだけでは物事は進みません」
 また、「言い訳のできない真剣さでやることも重要」とも指摘しています。どこかの街角でひっそりやってうまく行かなければ、場所が悪かった、時期が悪かったといろいろ言い訳を考えてしまうところですが、
「ロフトという信頼度、集客も文句ナシのところで目一杯やって、それでダメだったんだから言い訳のしようがない。正面から作戦を練り直すしかない。小さくスモールスタートで始めるのはもちろんいいことですが、そういう言い訳のできない真剣さでやらないと間違えてしまうこともあるかもしれません」

3.ブランドを作る/世界にパートナーをつくる/PRでインパクトを与える
 そもそもフェアトレードの認知率が3%、「それってほとんど知られてないということ」という反省。当時国内に入ってくるフェアトレード製品はほぼ固定しており、バリエーションに欠けていたという現実、そして名古屋ロフトでの失敗から作戦を立て直し、まずブランドとして確立させること、世界と直接コンタクトし、独自性の高い製品を作っていくことという方針を立てました。
 ブランド「LOVE & SENSE」を立ち上げ、ちょうどタイミングと縁があり、表参道ヒルズにショップを出すことができました。「チャンスの神様はいます。いつどこでチャンスが与えられるか分からない。だからいつでも準備しておくことが大切です」と高津氏。
 また、社会にアピールしていくために、PRを活用していくことにも注力。名古屋ロフトでは、売上では失敗したものの、有名メディアで取り上げられるという実績もありました。表参道ヒルズの出店は3カ月の期間限定でしたが、その間にNHKなどテレビ・メディアでも取り上げられ、大きな反響を呼びました。
「出店実績やメディアでの扱い実績をどんどん積み上げていくと、その後につながっていきます。表参道ヒルズの後は、高島屋、伊勢丹などポップアップショップで、1週間、3カ月と良い感じで出店を続けていくことができるようになりました」

4.会社をたたむ/常設店舗を持つ
 そしていよいよ活動は次の段階へ進みます。ここまで存続させていたマーケティング会社は、「自分の中で矛盾として抱えていた」ためにたたむことに。「フェアトレードをやっている一方で、その反対に消費を煽るような仕事をしているのはダメじゃないかと。本腰を入れて取り組むために、ここでたたむことにしました。」
 そして同時にポップアップショップで回していたお店をいよいよ常設店に。これまで積み重ねてきた実績に加え、「がんばってねじ込んだ」という努力の甲斐があってなんと阪急うめだ本店にお店を出すことができました。
「ちゃんとやってきた実績はとても大事で、そうやって、一個やってみる、一個やってみると繰り返してきたことで、一個一個宝物を拾ってきたようなもの。そういう実践を積み重ねることが大事です」

5.安定する商品を創る/スタッフの常識を変える/商業施設にインパクトを与える
 仕事も一本化し、常設店も出した。順風満帆に見えますが、「実はトラブル続出」だったのが当初の現状だったそうです。
 まず、改めて商品構成の貧弱さが浮き彫りになりました。常設店ということは1年毎日季節に応じた商品を出す必要がありますが、フェアトレードの対象となる国は 赤道に近いエリアが多く、つまり普通に扱えば夏物しかありません。商品の数も決して多くはないうえに、品質の不安定さも幾度も問題になりました。
 また、趣旨に賛同し人材が集まっては来るものの、長続きしないという問題も発生。
「お店ではバーゲンは理念に反するからやらないし、毎年違った商品を出し続けることはできません。しかしこれがアパレル業界の常識と真っ向からぶつかって。せっかく理念に共感して集まってくれたスタッフも、やり方を受け入れられずに辞めてしまうんです」
 アパレルだが、フェアトレードにはアパレルとは違う常識ややり方がある。そうしたことを伝えていくことも課題になりました。
 また、より大きな影響・インパクトを与えていくためには、お店だけではなく、商業施設も変わる必要がありました。そのために阪急うめだ本店の1階にポップアップショップを出すなどの取り組みもするようになりました。(写真はアルミのプルトップで作ったバッグの「プルタブシリーズ」は2018年エコプロアワードを受賞した(LOVE & SENSEのサイトより)

6.流通業に考え方をインプットする/企業にアプローチする
 話はようやく現在に近づきます。「今は、流通業界に考えを浸透させたい」という段階に。
「これからもっと広く知ってもらうためには、次は流通業界にインプットしなければいけません。だから社長に会わせろ!といろいろなところへアプローチをしています。また、フェアトレードが広まることは、日本のモノづくりをしている人たちにとっても意味があること。ハッピーになるものだと信じているので、同様にその他の企業にもアプローチして、私たちのミッションを知ってほしいと考えています」


▼「一歩」そこに大切で必要なものは 
 そして最後に、高津氏が講師を務めるイノベーション・キュレーター塾のプロセスを紹介しながら、「一歩に大切なこと」を解説します。
 インキュベーション・キュレーター塾は、京都ソーシャルイノベーション研究所(SILK)が取り組む、イノベーションを起こし、企業を変えていくための人材育成のプログラムです。
 社会を変えていくために必要な、起点となる人材を育てるのがねらい。

「企業に長く伴走して走れる人材がまだまだ少ない」と高津氏。
 塾で取り組むプロセスそのものが、第一歩を踏み出すために必要なものと言い換えていいでしょう。まず「モヤモヤ」=個人の課題感をしっかりと掘り下げ、行動の起点にする。そして、社会の問題と課題を因数分解し本質をえぐり出す。そのうえでありたい未来を描き出し、ゴールへの道筋をバックキャストする。

「とにかく最初は解決したい問題は何なのかをもう一度見つめ直す。そこからスタート。そのうえで、原因がどこにあるのか、なぜその問題を解きたいのか、whyの掘り下げをガンガン繰り返して、ゆるがぬものにすることが大切です」
 また、「道筋は直線じゃないし、方法にこだわることもしないほうがいい」ともアドバイス。

「何かに取り組めば壁にぶつかるのは当たり前だし、一直線ということはあり得ません。曲がるしぶつかるし、そこから何を学ぶかが大切です。また、視点を変えるとまったく違うルートが見つかることもあります。課題解決を山とすれば、登山道じゃなくてロープウェイを見つけることもあるかもしれない。その時に、シューッと登っていく道を選ぶことも間違いではありません」 

 そして、「とにかく第一歩を」と呼びかけます。

「何かを始めれば見えてくるものもたくさんあります。もちろん、大変なことがあってトラブルもあるでしょう。でもそのトラブルも楽しむ自分でいると、取り組み続けることができるでしょう。私はいつも、世界の問題も、100年後の未来も、すべて今の『わたし』につながっていると思っています。そう感じたときに、みなさんはどんなアクションを起こしますか?」

呼びかけから、最後には参加者の胸に問いかけとなって、落ちていった高津氏の言葉に、私達はどの様に答えていくのでしょうか。





■未来に振り返ったときに

 最後に、今後の参加者の皆さんの活動に寄せて、小野氏からこんな締めくくりに言葉がありました。

「イノベーションとは、新しい技術の開発でも画期的なサービスや商品のことでもありません。イノベーションとは、私達の思いや哀しみ、あるいは憤りを糧に『心からこうありたいと願う新しい時代の常識』をつくることです。

ならば、それはよりよい社会の常識となっていって欲しいですよね。 そのためにはたゆまない試行錯誤が必要になってきます。くじけず柔軟なマインド:レジリエンスが大切になります。
そして、皆さんには『虫の目、鳥の目、魚の目』の3つの目を持ち続けていっていただきたいと思います。
『虫の目とはミクロ:現場の生の姿をみて課題の本質を見る目です。』
『鳥の目はマクロ:全体を俯瞰して対局を見る目です。』
『魚の目は時流、流れの方向や強さを読む目です。』

そして、今所属しているセクターにとらわれることなくどんどんと越境し、異なるテーマや福山の外の現場に行き、利他:つまりそこで取り組む方々と一緒に動いていってみて下さい。
それが新しい視点と学び、連携を生んでいきますし、皆さん自身の理念、ビジョンを育てることに繋がり、プロジェクトを進め新しい常識の時代を創っていく力となっていくはずです。

スタンフォード大学にあるdスクールにはこんな言葉が掲げられているそうです。
“Nothing is a mistake. There’s no win and no fail, there’s only make.”
――そこには成功も失敗もなく、ただ創造があるだけです。

そしてもう一面にはこうあります。
“The only way to do it is to DO IT.”
――やるっきゃない。

2050年のより良い未来へとつなぐプロジェクトを考えてきました。
その未来に生きている人が、『2050年の社会の始まりが、この福山未来共創塾だったのかもしれないなぁ』と振り返ってくれたらこんなにうれしいことはありません。

 ーーーでも、始めなければ、何も始まりません。

この2018年が、幸福な未来の常識の始まりだったと振り返れることを祈って、福山未来共創塾の全プログラムを終えたいと思います。」


 

 

 

 


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