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このストーリーは

プロジェクト 「 フューチャーセッションズ未来勉強会

から投稿されました。

健康を見つめ直す対話のセッション!
努力を最小限に留める健康アプローチとは?


生きていくうえで、健康ってとても大切ですよね。
でも、健康っていったいどのような状態のことを言うのか、みなさんはご存知でしょうか。

 WHO(世界保健機関)は、健康を次のように定義しています。
「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない。」(WHO設立における世界保健機構検証の前文より/1948年)

わかるようで、わからないような……。「社会的」とは? 「ないことではない」とは?
そして、そもそもわたしたちは具体的に、何をどうすればWHOが提唱する健康という状態になるのでしょうか? 

今回のセッションでは、そんな疑問も踏まえつつ、田辺三菱製薬 デジタルトランスフォーメーション部の木野ゆりか氏にご登壇を頂き、改めて“健康”について、みんなでセッションです。

『健康維持の方程式 <健康=◻︎×◻︎×◻︎〜> 〜努力を最小限に留める健康アプローチとは?〜』というテーマ、問いでさまざまなアイデアを出し合ってみました。

本レポートでは、そのセッションの一部をご紹介します。

 


木野さんによるインスピレーショントークでスタート!

 田辺三菱製薬のはじまりは古く、ドイツのメルクに次いで世界で2番目に歴史のある製薬会社です。340年を越える歴史において、何度も会社は危機的な状況を迎えますが、日本酒の防腐剤の研究に取り組んだり、食品添加物の研修を行ってみたりと、事業領域を広げながら上手に生き延びてきたようです。

 

木野さん)田辺三菱製薬が存続してこられたのは、そんなふうに、さまざまな領域に技術の探求を行ってきたからです。技術の領域が広がったからこそ、日本で薬を作り続けてこられたという背景があります。


そしていままた、危機は訪れているのだそうです。

木野さん)薬の値段は、どんどん下がってきています。開発にコストがかかるのですが、それでも値段が下がってしまうのです。薬の値段は国が決めています。国が値段を下げようと言ったら、下がるのです。私たちで決めることができないのです。


木野さんが所属するデジタルトランスフォーメーション部は、そんな状況を打破するためのひとつの手段として生まれた部署なのだそう。ヘルスケアをデジタル展開するアイデアと技術を開発しています。



知っているようで意外と知らない健康の定義

ここで改めて、木野さんから、WHOが定義する健康についての話がありました。

木野さん)「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない。」の「身体的」はピンと来ますよね。「精神的」もなんとなくわかります。私はここ、ちょっと興味がありますね。最後の「社会的」はちょっと難しい。これは健康であることの前提条件のようなものとして言われているもののこと。たとえば、社会的な排除を受けていない、といったことです。  

この日のセッションでは、この「身体的」「精神的」「社会的」という言葉それぞれを因数分解するというワークにみんなでチャレンジしました。

「身体的」「精神的」「社会的」を因数分解する……、という表現が、ちょっとわかりにくいと感じる方がいるかもしれません。

 木野さん)たとえば、「身体的」であったら、それは運動と睡眠のように要素を分解できそうです。すると、運動は運動で、もっと細かく分けていくこともできそうですよね。

「精神的」ということであれば、職場と家庭の人間関係、みたいに分解ができるかもしれません。

また、「社会的」であれば、WHOのほうでも社会格差、ストレス、失業、幼少期、労働、薬物依存など、さまざまな因子を定義してくれています。


今日のセッションではみんなで、この「身体的」「精神的」「社会的」というキーワードを、対話のセッションで因数分解することにチャレンジ……するのですが、もう少し、木野さんのインスピレーショントークは続きます!

 


製薬メーカーは他企業とのネットワークが重用に

薬の値段は国が決めるので製薬会社も楽じゃない……という状況のなか、実は薬の開発には大変なコストがかかるそうです。

木野さん)新しい薬を生み出そうと思ったら、日本では平均的に9~16年くらいの期間が必要です。また、新薬として販売にいたる化合物は、全体の25,965分の1という試算が出ています。薬は簡単につくれるものではないということなんです。 


薬のマーケットは幅が広がってきているのだそう。従来であれば、治療が主な目的であったはずが、たとえば、予防に目が向けらたり、再発防止のために薬が使われるような機会も増えてきているのだそうです。

つまり、治療の選択肢の拡大に向けて、製薬メーカーは挑戦をし続けているということでした。

木野さん)そんな背景から、薬の概念も変わってきています。いくつか例を挙げてみますね。


例その①:キュアアップさんは禁煙をサポートするアプリを作られています。吸いたくなると代替案を出して、気を紛らわせてくれるそうです。煙草を吸わないとこんないいことがありますよ、どのくらい得をしますよといった情報を届けて、患者さんの意識や行動の変容をうながすアプリだそうです。

例その②:塩野義製薬さん×akiliで、小児ADHDやASDを対象としたデジタル治療用アプリを展開しています。アプリ内で展開するゲームに取り組むことで、集中力などがアップするようにトレーニングをすることができるそうです。

例その③:それから、大塚製薬さんはClick Therapeuticsと組んで、うつ病に対するアプリを開発するそうです。これは、独自のトレーニング法を使った認知療法のアプリで、うつ病を治療するそうです。



多様な人材が集まるセッションならではのアイデアに期待!

木野さん)もうひとつだけ付け加えておくと、昨年、万博の誘致活動のなかで、未来社会デザイン会議というものにチームとして参加させていただきました。そして、ソーシャルイノベーションアワードで、わたしたちの取り組みが決勝にまで選ばれたのです。 

そのときに、チームが提案していた働きかけが「♯クスリナクス」という概念でした。製薬メーカーの社員でありながら、「♯クスリナクス」というアプローチをとったことで、会社のなかでは「ムムッ」と思った人もいるとか、いないとか。


木野さん)でも、私たちは誰もが健康でいるための努力を続けられるわけではありません。だから、こそ、どうやったら薬に頼らずにやっていける世界をつくれるのかなぁと考えていました。

そして、チーム「♯クスリナクス」は、健康に無関心な人たちをその特徴ごとに分類。SDGsの「すべての人に健康と福祉を」というカテゴリに照らして、なかなか健康維持活動に取り組めない人たちに、気軽に取り組める啓もう活動をスタートさせたのです。

こういった取り組みをしていくなかで、さまざまな気づきがあったそうなのですが、なかでも大切だったことが、「製薬会社だけでなく、異業種のさまざまな他社を巻き込んでいくことで可能性が広がっていく」ということでした。

木野さん)今回、多様な組織から、多用なみなさんに集まっていただけてとてもうれしいです。きっと、そんなみなさんから出てくる、さまざまなアイデアが、次のアクションのヒントになってくれると思っています!



健康の要素を因数分解する対話のセッション

 

木野さんのインスピレーショントークが終わり、いよいよセッションがスタート。

セッションは以下のような流れで展開されました。

 1.3つのグループをつくる【身体・精神・社会】
 2.不健康維持から健康維持を考える
  ─あなたは、どんな不健康を維持していますか?
  ─不健康を維持するには、どんなことをしたら良いだろうか?
 3.健康維持を因数分解する
  ─健康維持を因数分解すると、どんな構造になるだろうか?
 4.努力を最小限に留める健康維持アプローチを考える
  ─どうしたら、努力を最小限にできるだろうか?
 5.プレゼンテーション
  ─各チームのプレゼンテーション

 セッションでは参加者が「身体チーム」「心(精神)チーム」「社会チーム」に分かれて対話。

健康を考えるために、まずは自分たちが「どんな不健康を維持しているか」について各テーブルでアイデア出しを行いました。

そこからは、「身体チーム」はカラダについて、「心(精神)チーム」はココロについて、「社会チーム」はシャカイについて、健康維持の方程式 <健康=◻︎×◻︎×◻︎〜>を生み出すために、まずは、それぞれの状態を細かく分解すると、どのようなキーワードが出てくるのかを話し合いながら付箋に書きだしました。 

ひと通りアイデアを出したら、こんどはテーブルをチェンジ。身体チームが社会について考えて、心(精神)チームが身体について考えて、社会チームが心(精神)について考えて、とアイデアをさらに広げました。

最後は、出てきた因数分解された要素をながめながら、「努力を最小限に留める健康アプローチとは?」という問いのもと、効果的なアイデアの創造に取り組みました。 



楽して健康を維持するためのユニークなアイデアたち

ずいぶんと頭を悩ませた結果、「身体チーム」は意見がまとまりませんでした。でも、対話を通じた良い学びを得ていました。

最後のプレゼンテーションでは、「心(精神)チーム」と「社会チーム」から発表がありました。

 

プレゼンはまず、「社会チーム」から!! 

社会チーム)

社会チームが考えたのは、月額制のホストクラブもしくはガールズバーのようなビジネスです。見た目はスターバックスコーヒーのようは、入店しやすい雰囲気の店です。中に入ると、接客してくれるのは臨床心理士やカウンセリングの経験者や専門家です。彼らに悩みを聞いてもらってアドバイスをしてもらうことで悩みから気持ちを楽にすることができます。 

日本には、アメリカにあるようなカウンセリングが日常に近いという文化がありません。ただ、企業のえらいさんたちは、そういえば、銀座のクラブとかで、悩みや愚痴を聞いてもらっているではないかというところから考えてみました。

ポジションとしては、ホストクラブやガールズバーではなく、それよりソフトな執事喫茶やメイドカフェよりも、さらにハードルが低いようなイメージです。

健康に気をつかっているので、一日蒸留酒なら3杯まで無料で飲めますが、ビールなどは別料金を設定しています。

 

続いては、「心(精神)チーム」!!


心(精神)チーム)

私たちは、“とにかく努力をしたくない”ということをベースに考えました。

健康を維持しようとすると、多大な努力を強いられる印象がありますが、極力無駄なアプローチはしません。

自分がなにをしたら健康に悪影響がでるのかをまずは把握して、自分のタイプをきちんと見定めます。そのために自分の活動を記録する必要があるのですが、めんどくさいので自動でそれをやってくれるような仕組みです。 

たとえば、スマートスピーカーのようなものがあって、「今日はこんな出来事があって、つらかったんだよ、うれしかったんだよ」というような話をすれば、AIが「あなたはこんなことをストレスに感じるよ、こんなことが癒しになるよ」とういことを分析してくれます。

改善策は押しつけられるのではなく、いくつか選択肢があって、きちんと自分で選ぶことができます。こういった仕組みをたくさんつくっていけたらよいのではないかと考えました。

つくり出すためのお金はかかるかもしれませんが、それで健康な人が増えるのであれば、保険料や医療費が浮くので、その分をまわしてもらえばよいと考えました。

こうして各チームのプレゼンテーションは終了となりました!    






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健康を維持する。という言葉は、聞き慣れた言葉かもしれませんが、健康を多様な参加者の視点から因数分解することで、今までは理解しきれなかった健康維持が見えてきました。

今の行動は未来につながる。今から始める健康維持の行動は、来年や再来年の健康を生むことでしょう。

そして、健康維持の行動は、私たちみんなの知恵を集めることで、少しでも苦痛を減らしたアクションに変わっていけると思いました。

また、次回の未来勉強会もお楽しみに!



ゲスト インスピレーショントーカー:


木野 ゆりか(きの ゆりか)

田辺三菱製薬株式会社 デジタルトランスフォーメーション部 博士(薬学)薬剤師

田辺三菱製薬2006年入社。薬理学(薬がどういうメカニズムで、どこで効くのか)を大学から通算20年研究。新規事業立ち上げに興味があり2018年4月よりフューチャーデザイン部に異動。今年の4月からデジタルトランスフォーメーション部と改称。
小学4年生の健康イシキ高い系の長女(お風呂が長め)と主食はトウモロコシと納豆と豆腐の年中男子の母として奮闘中。
2018年のソーシャルイノベーションフォーラムでは様々な企業・官公庁混合のチーム「クスリナクス」としてソーシャルイノベーターに選出。

田辺三菱製薬 CSR>消費者課題>VOICE

https://www.mt-pharma.co.jp/shared/show.php?url=/csr/report/consumer_issues/voice.html


ファシリテーター:


最上 元樹
株式会社フューチャーセッションズ イノベーション プロデューサー  

2015年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。 2002年に文房具事務用品メーカーのエーワン株式会社に入社後、営業、製品開発を経験。2010年から3M Japan Group 文具・オフィス事業部のマーケティングにて、事業戦略やマーケティング戦略立案を主導したのち、2016年1月フューチャーセッションズに入社。 大手企業のイノベーションプロデュースを中心に活動し、現在に至る 

株式会社フューチャーセッションズ 
https://www.futuresessions.com/



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