2018年9月15日開催
【福山未来共創塾】オープニングセッション:開催レポート

2018年9月15日、広島県福山市・まなびの館ローズコムにて「福山未来共創塾」のオープニングセッションが開催されました。
福山未来共創塾は、未来の福山に関わるすべての人と共に、これからの福山のありたい姿を考え、その未来を実現するためのプロジェクトやアイディアの検討、そしてファーストアクションを創出する「共創と学び合いの場」です。
初回には年齢も所属もばらばらな多様性に富んだ93名の市民が参加。対話を重ねながら「2050年の福山」の姿を描いていきました。
■多様な価値観で、「理想の未来」と必要な「シゴト」を考える

福山未来共創塾のキャッチコピーは「2050年の未来につなぐ『シゴト』を創ろう!」というもの。この言葉について本塾のファシリテーターを務める小野眞司(企業間フューチャーセンター)は次のように説明します。
 「『シゴト』と聞くと『仕事』という漢字を思い浮かべると思いますが、実はそれだけではなく、『志事』や『私事』、『思事』、『試事』といった漢字も当てはめることができます。いずれのシゴトも、未来を創るために、あるいは世の中を良くするために必要なものであるので、よりよい未来社会を実現するためにはこれら数々の『シゴト』を創ることが大切なのです。この塾は、そういった『シゴト』を創る場にしたいと思っています」
「『シゴト』と聞くと『仕事』という漢字を思い浮かべると思いますが、実はそれだけではなく、『志事』や『私事』、『思事』、『試事』といった漢字も当てはめることができます。いずれのシゴトも、未来を創るために、あるいは世の中を良くするために必要なものであるので、よりよい未来社会を実現するためにはこれら数々の『シゴト』を創ることが大切なのです。この塾は、そういった『シゴト』を創る場にしたいと思っています」
 「ありたい未来の社会」を考えるということは、つまり「未来の”まち”の姿」について考えるということです。
「ありたい未来の社会」を考えるということは、つまり「未来の”まち”の姿」について考えるということです。
こうしたテーマを扱う際、「どんな課題を抱えているのか」「その課題はどうすれば解決できるのか」というように、現状を把握した上でより確実な未来像を描く「フォアキャスティング」という手法が一般的です。
しかし福山未来共創塾では、極端な未来を“来るもの”と仮設定し、実際にそうなっていくためには今何をすべきかを考える「バックキャスティング」という手法を用いました。未来志向で過去を振り返っていくことで、その時々の状況を打開するアイディアや、未来につながる発展性のあるプロジェクトを検討する際に効果を発揮するものです。
また、「まちの未来」という壮大なものを考えていく上では、1人の視点に頼ると視野が狭まるので、多様な人のアイディアや思いを掛け合わせ、視点を拡張することが必要でになりるなど、参加にあたっての視座や心構えについての解説がありました。
「未来というものは誰にもわからないもので、予測がつかないことも多いですよね。だ から、いろんなことが起こりうる未来を描く上で、多様な人が集まり、多様な価値観を 持ち寄って対話をしていただき、未来を紡いでいくことが大切なのです」(塚本)
「多様な視点を混ぜこぜにすることで、その中からキラリと光るものを見つけていく。
そのために『共』に『創』る、『共創』をしていきたいと思います」(小野)






■笹谷氏が語る「SDGs×まちづくり」のヒント
 福山未来共創塾の趣旨を紹介したところで、笹谷秀光氏によるインスピレーショントークへと移ります。
福山未来共創塾の趣旨を紹介したところで、笹谷秀光氏によるインスピレーショントークへと移ります。
株式会社伊藤園顧問や、特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラム理事などを務める笹谷氏は、これまで数々の地方創生への取り組みを行ってきた人物です。
そんな笹谷氏は「サステナビリティ新時代:共創と協働で開く未来社会」と題し、近年注目を集めるSDGs(エスディージーズ)の概念の紹介と、SDGsを活用したまちづくりのポイントについて講演しました。
SDGsとは、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されるもので、国連加盟国が2030年までに達成するために掲げた、次の17個の目標です。
(1)貧困をなくそう、(2)飢餓をゼロに、(3)すべての人に健康と福祉を、(4)質の高い教育をみんなに、(5)ジェンダー平等を実現しよう、(6)安全な水とトイレを世界中に、(7)エネルギーをみんなに そしてクリーンに、(8)働きがいも経済成長も、(9)産業と技術革新の基盤をつくろう、(10)人や国の不平等をなくそう、(11)住み続けられるまちづくりを、(12)つくる責任 つかう責任、(13)気候変動に具体的な対策を、(14)海の豊かさを守ろう、(15)陸の豊かさも守ろう、(16)平和と校正をすべての人に、(17)パートナーシップで目標を達成しよう
 SDGsの17の目標は、(1)~(6)を 「PEOPLE(人間)」、(7)~(11)を 「PROSPERITY(豊かさ)」、(12)~ (15)を「PLANET(地球)」、(16)を 「PEACE」、(17)を「PARTNERSHIP (パートナーシップ)」という、5つの「P」 にカテゴライズすることができると笹谷氏
SDGsの17の目標は、(1)~(6)を 「PEOPLE(人間)」、(7)~(11)を 「PROSPERITY(豊かさ)」、(12)~ (15)を「PLANET(地球)」、(16)を 「PEACE」、(17)を「PARTNERSHIP (パートナーシップ)」という、5つの「P」 にカテゴライズすることができると笹谷氏
「持続可能な開発目標」というと難しい印象を受けますが、笹谷氏は次のように噛み砕いて説明をしました。
「私はSDGsを『世のため、人のため、自分のため、そして子孫のため』という言葉で表現しています。つまり、未来につなげる、自分たちの子孫につなげるという概念なのです。今はこうした考を持たない国や企業、団体は成り立たないと言われています」
「未来」や「子孫」につなげることは、「想い」だけでは成し得るものではなく、「儲けなくてはつながっていかない」とも笹谷氏は説きます。

「アメリカの経済学者であるマイケル・ポーター氏は、企業は本業で培った力を使って社会課題に対処し、収益につなげることが重要だと提唱しています。そして、企業と地域の両方がWin-Winの関係を築くことが、持続していく上では欠かせないのです」
 Win-Winの関係を築くためのプラットフォームとなるのがこのSDGsであるというのです。SDGsが採択されたのは2016年のことですが、実は日本には非常によく似た思想が昔から存在します。近江商人が大切にした「三方よし」という考えです。これは「売り手」「買い手」「世間」という三方がともに満足する商売をせよという心得で、多かれ少なかれ、今ではどの自治体や企業もこの考えを持っています。そのため、笹谷氏は「三方よしの考えはもはや日本人に身についているものなので、SDGsの17の目標も日本人にはすでに身についている」と言います。一方、近江商人がもう一つ大切にしていた「陰徳善事(人に知られずに善い行いをすること)」という考えについては、必ずしも倣う必要はないとも言います。
Win-Winの関係を築くためのプラットフォームとなるのがこのSDGsであるというのです。SDGsが採択されたのは2016年のことですが、実は日本には非常によく似た思想が昔から存在します。近江商人が大切にした「三方よし」という考えです。これは「売り手」「買い手」「世間」という三方がともに満足する商売をせよという心得で、多かれ少なかれ、今ではどの自治体や企業もこの考えを持っています。そのため、笹谷氏は「三方よしの考えはもはや日本人に身についているものなので、SDGsの17の目標も日本人にはすでに身についている」と言います。一方、近江商人がもう一つ大切にしていた「陰徳善事(人に知られずに善い行いをすること)」という考えについては、必ずしも倣う必要はないとも言います。
「今の時代においては、『発信』が非常に重要です。発信をしなくては仲間も増えません。仲間が増えないと新しいこと、つまりイノベーションも起こりません。逆に、発信さえしっかりとしていけば、三方よしの気持ちを持った日本人ならばイノベーションを起こせるのではないかと思っています」

では、SDGsをまちづくりに活用していく上ではどのようなことが必要になるのでしょうか。笹谷氏は「SDGsは街に凝縮されるものだと理解すること」「自分たちの身近な問題に置き換えて考えていくこと」がポイントだと解説しました。
「山や海などの自然を守る、農業を活性化させる、再生可能エネルギーを活用する、教育面の充実やジェンダー平等を実現する…SDGsの17の目標は非常に広範に感じられるかもしれませんが、実はいずれも『街』にリンクしたものなのです。

実際、2017年に実施された『ふくやま未来づくり100人委員会』で出されたアイディアの多くがSDGsとリンクしていると感じました。これからまちづくりに取り組んでいく中で、自分たちが抱いている課題感や取り組みたいテーマをSDGsと照らし合わせていくとうまく整理ができますし、ゆくゆくは先駆的な都市にもなり得ると考えています」
SDGsの17の目標は世界的に解決すべき課題といえます。つまり自分たちが暮らす地域においても同様の課題が存在するのです。「まちづくり」という言葉はややもすると漠然としたイメージを持ち、「なんとなく新しい取り組みをしよう」となりがちですが、このSDGsを基準に考えていくことで向き合うべき課題が明確になり、持続的な取り組みが可能になると、笹谷氏は訴えたのでした。
■マルチセクターで共創する「17の未来社会像」
インスピレーショントークを終え、参加者同士のワークショップへと移ります。
冒頭でも記したように今回のテーマは「2050年にありたい未来社会」です。

それを具現化していくために「自分が実現したいことは2050年のどんな未来につながっているのか」「他の人がやりたいことに対して自分は何ができるか」という問いについて対話を重ね、そこから改めて出てきた「2050年の未来づくりのために大切にしたいこと」をキーワードとして個人個人で紙に書き出していきました。


そして、
・近いこと
・違うけど、一緒にやると面白そうなこと
・自分のよりもいいと思うこと
の3つのルールでチームを組み、自分たちが思い描く
「2050年に瀬戸内の真ん中に出現している課題の解決された未来のまち」を紹介する「未来〇〇新聞」を作っていきました。
それぞれが異なるテーマながらも、共通しているのは「自分たちの”まち”をもっと良い街にしたい」ということ。

新聞作成後は、チーム同士の交流の時間を設け、全員がアドバイスを送り合ったり、笑顔で感想を語り合ったりで、新しいアイデアやつながりにもなっていく様子が伺えました。






未来〇〇新聞17部:
・住んで楽しい豊かな福山づくり
・祝・ローズマインド130周年!! ~ローズマインドが続いた結果~ 
・人・物・金 全てが集まる日本一安心安全なまち
・楽しさMax福山
・BINGOフェイス~備後の情報発信基地~ 
・AIローラ出現 
・住みたい街“福山”づくり
・農業・漁業がなりたい職業No.1に
・少子化の時代に子供がたくさん住む街!
・子ども教育先進特区実現! 
・銀河系No.1ダイバーシティ 
・「田尻」で瀬戸内サミット開催
・未来まちづくり・ひとづくり 
・みんなが笑顔で過ごせるまち福山 
・コンパクトシティによる自給率100%実現へ 
・みんパブライブラリー 
・狼型AIBOで農業を救う!!
■クロージング:自発的アクションがイノベーションの種を生み出す
市民が考えた思い思いの「そうありたい未来」。
それが形作られていく様子を見守った枝広直幹 福山市長と、笹谷氏は次のように感想を述べました。
 「『ふくやま未来づくり100人委員会』からさらに 進化を感じました。 もともと福山市は市民と行政が協働してまちづく りに取り組むという特徴がありましたが、今日こ の場に来て、『一緒に働くだけではなく、一緒に 考えたい』というニーズが市民の方々の中で強く なってきていることを改めて感じました。これか らも、自分たちの未来は自分たちで考え、つくる ということを意識し、充実した議論や対話を重ね ていっていただきたいと思います」(枝広市長)
「『ふくやま未来づくり100人委員会』からさらに 進化を感じました。 もともと福山市は市民と行政が協働してまちづく りに取り組むという特徴がありましたが、今日こ の場に来て、『一緒に働くだけではなく、一緒に 考えたい』というニーズが市民の方々の中で強く なってきていることを改めて感じました。これか らも、自分たちの未来は自分たちで考え、つくる ということを意識し、充実した議論や対話を重ね ていっていただきたいと思います」(枝広市長) 
 「福山市が進めている市民主役行政がさらに進化する過程に立ち会うことができ、その熱気に心強 さを覚えました。SDGsを推し進めていく上では1 に『普遍性』、2に『包摂性』が大切ですが、今 日この場には、3番目に大切な、みんなで知恵を 出し合う『参画』がありました。今後は、経済と 環境と社会が一石三鳥になるような『統合性』と、 考えていることを世に発信していく『透明性』も重 視していただき、さらなる進化を期待したいと思 います」(笹谷氏)
「福山市が進めている市民主役行政がさらに進化する過程に立ち会うことができ、その熱気に心強 さを覚えました。SDGsを推し進めていく上では1 に『普遍性』、2に『包摂性』が大切ですが、今 日この場には、3番目に大切な、みんなで知恵を 出し合う『参画』がありました。今後は、経済と 環境と社会が一石三鳥になるような『統合性』と、 考えていることを世に発信していく『透明性』も重 視していただき、さらなる進化を期待したいと思 います」(笹谷氏)
こうしてオープニングセッションは終了の時間を迎えました。次回以降は人数を絞り、より具体的なアイディアやプロジェクトを考えていくフェーズへと移ります。最後に小野は次のように話し、この会を締めくくりました。


「今日生まれたアイディアや未来の福山の姿をあちこちで紹介してみてください。そうやって自発的なアクションを起こすことで交流が生まれ、イノベーションの種が生まれていきます。それが、この福山未来共創塾の本質的な狙いなのです」(小野)
今回生まれた福山の未来の種が、今後どのように萌芽していき、どんな花を咲かせていくことになるのか。期待していきたいと思います。
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