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プロジェクト 「 福山未来共創塾2018

から投稿されました。

2018年10月13日開催
10/13セッション:福山未来共創塾 開催レポート 



9月のオープニングセッションに続く、2回目の未来共創塾が10月13日、まなびの館ローズコムで開催されました。

参加者一人一人のやりたいこと、福山で実現したいことなどを「マイテーマ」として持ち寄ってもらい、具体的なプロジェクトとしてスタートさせることを目的にした共創のセッションです。
2017年に作成された「30年後の未来図」や国際的な潮流「SDGs」(国連が掲げた持続可能な開発目標)も参考にしながら、2050年のありたい未来社会を、セクターやエリアの枠を超えて実現していこうというプロジェクトを創出します。10/13セッションには、44名の参加者が集まり、日が落ちて暗くなるまで、熱いセッションを繰り広げました。

(創出された9つのプロジェクトのご紹介はこちら


■「キラリと光るアイデアを」 

 開催に先立ち、ファシリテーターを務める「企業間フューチャーセンター」フェローで、「Future Center FUKUYAMA」代表の小野眞司氏から、本会の趣旨、内容の説明がありました。

 小野氏は、激変を続ける現代社会では未来を予測することが困難なこと、これまでの成功体験が通用しなくなっていることを指摘し、さまざまな領域の人々が交流し、未来を考えるために「共創」という手法が有効であることを解説しました。

「世の中が複雑化し、未来を予測することができなくなった一方で、社会全体がセクター化、サイロ化し硬直化しています。「共創」はそうした枠を超えて、知と知を交流させるためのもの。今回は、「共創」を通じて、新しい『シゴト』を生み出しましょう」(小野氏)

 未来共創塾では『シゴト』とカタカナで表記したのは訳があります。
「誰かや何かのために始めようという志から『志事』が始まり、
それをまず試しにやってみようという『試事』。それがうまくいくようになったら、持続して回して『仕事』として機能するようになる。
ビジネスというのは、本来そのような循環から生まれるものであったはず。今日は、未来に向けて初心に戻って『シゴト』を考えていきます」(同) 


「今日、ここに参加されたのは、誰かから強制されたわけでもなく、『未来につなぐプロジェクトを創ろう』という皆さんの自由な意志でいらっしゃったと思います。セッションでは、参加者の皆さんの交流を促し、対話による思考や議 論を深め、前へ進む手助けをしていきます。しかし、基本的には皆さんの自由です。自由にしかし、お互いを尊重し、キラリと光るアイデアを見つけ、それをたくさんの知恵でカタチにして行きましょう」(同)


 そして、セッションを進めるうえで大切なこととして以下の5項目を挙げて、お互いの『違い』を理解することに努めるように呼びかけました。
(1)一人ひとりの「想い」と「感情」を大切に
(2)違いを尊重し、異なる意見を受け入れる
(3)言い合いではなく、聴き合いの場に
(4)リラックスし楽しい時間を一緒につくる
(5)今日の縁を大切に、お互いで支援し合う


■場のベースを整えるフィッシュボウル 


 

 セッションの始まりは、フィッシュボウルという参加型パネルディスカッションです。
 中心に向かい合わせに置いた数席の椅子に希望する参加者が座り、テーマに沿った対話をしていくというもの。他の参加者はそれを取り囲んで傾聴します。途中、周囲の参加者も話したくなったら、空いている椅子に座ってディスカッションに参加することができ、そのときは、それまで中心にいた人のうち一人が外の席に自主的に外れます。
 最初に着座したのは、ファシリテーターの小野氏と4人の参加者。マイテーマを通じて「2050年の瀬戸内に出現させたい未来社会」をテーマに、一人ずつ話しはじめてスタート。
一人は「地域の活性化を市と連動して行いたい」
またある人は「瀬戸内全体をゾーンとして生き残りをかけて再生させたい」と対象とする地域観も幅が広いうえ、NPOからビジネス、子どもから高齢者と対象や手法も非常に多岐にわたっています。

 小野氏のファシリテートで、地域問題から高齢者問題、AIと若年層の労働の問題とテーマも軽やかに変化していきます。
「今後地方自治体は生き残りを賭けて『都市か地方か』という分極を選択しなければいけなくなる中、1市、1県だけではなく、広域連携で新しい地方の形を模索しなければいけないのでは」

「高齢者が活き活きと生きているには、個々の個性と特性が活かせる居場所がなければならないのでは。それはもしかしたら若者もまた持つべきもので、生き方を考え直す必要があるのではないか」

「教育のあり方が変わるべき時代に来ているんじゃないか。従来の教育内容から、AIやIoT、プレゼン能力、そういった自分の能力を引き出すための教育の重要性が増すはずだ」

 議論は様々ありましたが、共通しているのは、みな底の知れない熱意を持っているということ。途中、1人がフィッシュボウルに加わるも、席を立つ人がいなく、議論はさらにヒートアップしていくうちにタイムアップとなりました。


■惹かれ合う「思い」、惹きつけられる「マイテーマ」 

 今日集まった思いを共有し、場も温まってきたところで、いよいよ本番です。
 繰り返しの説明になりますが、未来共創塾は、連続シリーズではありません。毎回新しいプロジェクトを立ち上げ、各参加者が「シゴト」をスモールスタートで始めることが狙いです。

今回は以下の手順で進めることになりました。

(1)マイテーマを提示

(2)テーマごとにグループ化

(3)3ラウンドのセッションで「シゴト」のチームを結成する

 

 参加者は全員がやりたいこと、思いを「マイテーマ」として持ってきています。まずは、オーナーとして立候補したい人に「取り組みたいプロジェクトテーマ」を書いた紙を張り出していただきましたが、その数は参加人数と同じ数となりました。

 

 通常は、テーマオーナーとして立候補し、提案する人は1~2割なのですが、今回は結果ほぼ全員がオーナーとして立候補したわけです。
 一人ひとりの思いのこもったテーマは、決して他者によって妥協や収縮を促していいものではありません。
 今日の場の基本原則である、「自由」「自主」にしたがって、参加者の自身の意志で納得の行くまで話し合って、グループに分かれていきました。    





 

この時点でできたグループは8つ。

大まかに言うと、以下のようなテーマ・人数となりました。

「科学館・水族館」2名

「コミュニティ」5名

「ライブラリカフェ」4名

「バラの街」2名

「健康・賑わい」8名

「障害者・子ども・高齢者/ノーマライゼーション」8名

「地域」7名

「産業・若者」8名


 顔見知りの方や前回からの連続出席という参加者もおり、すでにお互いの考えを理解している者同士で集まるグループもあれば、まるっきり初めてで名刺交換から始まるグループもありました。

「今はまだ『チーム』ではありません」と小野氏は説明しています。

このグループで、この後3つのラウンドセッションを行い、それぞれで話し合った内容を共有していきます。ラウンドの途中で抜けて他のグループに行ったり、全部のグループを見て回ることも自由です。自分で新しいプロジェクトを立ち上げてもOKです。最終的に納得した上で、プロジェクトチームを編成することになります。 

 
話し合う手順は、以下の3ステップ。
 ラウンド1「なぜこのテーマなのか?」
 ラウンド2「どんな未来を実現するのか?」
 ラウンド3「その未来のためにすることは?」
ステップを通じて、持ち寄ったテーマや思いを分解し、深め、共有し、配布した「プロジェクト基本シート」にまとめていきま

 しかしテーマが「近い」と思って集まったグループとはいえ、その思いや内容は少しずつ違います。その問題への関わり方も違い、思いにも濃淡があります。そうした違いを語り、聞き、理解するのも大変な仕事。

 人数が多く、初対面の多いグループほど、思いを語り合い、意見交換する時間が長くなりました。また、思いを語り合うだけに、ふわっとした具体性のない議論に終始しがちなところもあるなど、いろいろな問題も見えてきます。

 ラウンド1「なぜこのテーマなのか?」は「whyを掘り下げる作業です」と小野氏。

「whyとはプロジェクトの芯になるもの。なぜそのテーマを持ったのかという理由。これが共有されないと、行き詰まったときに、ぶれてしまいます。まずはここを深め、共感をもち、言語化していくことが重要なのです」(小野氏)


■具体化するためのアクセル  


 そんなふわっとした議論は、ラウンド2、3に入るに従って、具体化に向けて加速しはじめます。

 ラウンド2は「どんな未来を実現するのか?」がテーマ。
 解決したい問題を意識はしていても、実は問題が解決された後の姿、世界についてはあまり意識されておらず、具体的なイメージがしにくい場合が多いのです。グループに様々な人がいることで、作るべき世界のイメージの拡大を迫られる人もでてきます。そこでは思考の中で具体と抽象の往復が起き、本人たちも気付かない間にどんどん議論の深度と濃度が増していきます。 

「私は、そのプロジェクトになぜ取り組むのか?」

「Why」を構成するのは、過去から現在における「問題意識」と、それが払拭された状態である「つくりたい未来像」です。
ラウンド2の最後で、小野氏が強く求めたのがその中間にある「ターゲット像(対象:Who)」を明確にすること。これがクリアにならなければ、「その未来を実現するためにすること(What)は?」というプロジェクトの議論も宙に浮いたものになってしまいます。


 これを踏まえた最後のラウンド3は、ある意味で鬼気迫るものになったとも言えるかもしれません。

 時間は過ぎていくが、しかもやるべきことをきちんと決めなければいけない。ラウンド2までは、グループによってはふわっとした感覚が残っている様子もありました。「福山にはこういう問題がある」と気付き、だから「こういう社会にしなければならない」「こういうものを作らなければいけない」とアイデアを持つことは素晴らしいことです。

 しかし、そこで止まっていては具体性に欠けてしまいます。
アイデアを持つことと「それを実行する」ことの間には、実際には大きく深い溝があるのです。  




 
 小野氏はこう話しています。
「プランやマイテーマを話しているうちは、実はふわっとしていて、具体性に欠けていることに気付かないことが多いんです。それは構想として、どこかに持ち込もう、誰かにやってもらおうとしていることも同じです。
本当に自分の手でスモールスタートをやろうとしたときに、初めてそのふわっとしていた自分に気付く。それに気付かなければプランやテーマもただの夢、言葉だけで終わってしまうでしょう」(小野氏)

 最後は、ラウンドのまとめとして、リーダーを決定しここまでの内容をシェア。最初のグルーピング時の内容を踏襲してはいるものの、具体的で方向性がより明確になったプランになっていました。


■実行する「チーム」へ 


 

 明るいうちに始まったセッションも、気がつけばもう夕暮れ
 そしていよいよ最後のプログラム、プロジェクトを実行する「チームビルディング」のパートへと移ります。
 「ここまでで基本骨子はできました。この先は、プロジェクトの実施に必要な構成要素やステークホルダーを検討し、その調達方法などの最初のアクションプランを作っていきます。
他のグループの発表も聞きながら『自分が実際に取り組んでいく』ことを前提に、実際にそのプロジェクトを走らせるチームになってください。そして、終了時間までに第1回目のチームミーティングの日時・場所までを決めてください」(小野氏)

 往々にしてアイデアやプランをまとめて終了ではなく「福山未来共創塾」が創出したいものは「本当に実施していくためのプロジェクト」です。
 話し合うだけではなく、いよいよ自分が本当に一歩踏み出すのだと強く自覚したときに、参加者の顔色が変わったのは武者震いのようなものだったに違いありません。
最後のセッションでは、基本シートに加えて「プロジェクト構想シート」「アクションプラン」も配布され、より詳しく最初の一歩が記されることになりました。

 ちなみに、「もとのグループ」に縛られる必要がないこともアナウンスされています。
 ここまでの検討で、グループにとどまりそのままチームとなるか、別のテーマのチームに入るか、それもまた参加者の任意。複数のチームに入ることも自由です。

「起こるべきことが、起こるべきときに起こる」と小野氏が言うように、水が流れるようにチームが作られていきます。8つあったグループのうち、1つのグループが分岐し、最終的には以下の9つのチームが結成されました(発表順)                  

①「フクヤマ・ネクスト」 ……働き方改革を軸にしたコミュニティ、プラットフォームの構築を目指す。

②「健康長寿のまち 福山」 ……街中でのウォーキングを中心に据えた健康施策を展開したい。

③「ローズ・イノベーション」 ……2024年「国際バラ会議」をマイルストーンと定め、バラで地域を活性化する。

④「チーム・プロジェクト名未定(ウォーキング&サイクル)」 ……健康と人のつながりを目的にした交流プラットフォーム、イベントの構想。

⑤「B&D~ブック&ダイアログ」 ……インキュベーション、交流プラットフォーム等の場としてのブックカフェの設立。

⑥「ローズコイン(ローズ通貨)」 ……分断する地域を統合するための地域通貨を設立し、活用する。

⑦「ひゅっげ」 ……デンマーク語で「居心地の良い場所」を意味する言葉。障害者、高齢者、子ども、病気の人でも居心地の良い福山を作る。

⑧「遊んで稼ごう!」 ……趣味など本業以外のスキルを地域活性化のために活用するための人財バンク構想。

⑨「みらい館」 ……福山の科学教育の基盤を構成し、知力・科学力をアップすることを目指す。最終的には福山市からノーベル賞受賞者輩出が目標。

(各プロジェクトのご紹介はこちら

■未来はここから始まる 


 クロージングにあたり、小野氏は「小さなアクションを繰り返して」と呼びかけています。

「調査やプロトタイピング(試作)を行い、それを最初に考えた『Why』にフィードバックして、次に何をやるかを考える。プロジェクトとはその繰り返しなんですね。」

「最初に考えたものがそのまま形になることはまずあり得ません。うまくいかない、フィードバックをもらう、改定してまたアクションする、それを繰り返して行くとプロジェクトは変わっていくはずです。うまくいき始めた時、最初とはまったく違ったものになっているでしょう。」

「配布したプロジェクトシートはそうしたアクションを始めるためのものですが、それが全てではありません。恐れずにどんどんやってください。
こうしたプロジェクトに失敗はありません。なぜなら、成功するまで変化し続けるから。こうすれば成功するというやり方はありませんが、始めなければ何も始まりません。皆さんの最初の一歩に期待しています」


「今回創出したプロジェクトは、最初のシゴト(志事から試事へ)としてスタートするはず。アクションを起こして、途中で止まってしまったり、どうすればいいのかわからなくなったら、この先11月12月に開催される回に持ち込んでみてください。机上の議論だけで再度同じものを持ち込んでも、それは意味がないですよね?でも、アクションを起こしフィードバックを受けていれば、また新しい気付きや発見がかならずあるはずです。」 


 一方、参加者の方はどのように受け止めていたでしょうか。
 セッション終了後も、引き続きチームミーティングを続けている方も多い中、インタビューしてみました。



 

 某地域でまちおこしの活動に取り 組んでいるある参加者は「市がこうした活動をしているのは知らなかった。新鮮で楽しかった。」と話しています。
 また、市内で社会的な活動に従事しているある参加者は「有意義な会議だった」と振り返っています。
 実は、事務局のスタッフが「こんな 人財がいたのか」と驚くほど、さまざまな新しい参加者が集まっていました。

「いつもは町内の人と話すだけですが、今日は市内の本当にいろいろな人と話すことができたのが良かった。こういう初対面同士が、実現に向けて本当に活動を始めるというのも新鮮。」

「このプロジェクトは実際にやるつもりだし、その成果はそのままスケールを下げて地域でも実践が可能なものなので、両方にとって意味のあるものにできると思います」

「市のやることなので、なんとなく話してなんとなく終わるんだろうなと、最初は正直期待してなかった。でもやりたいという思いを持った人と話し、つながって、実現に向けてイメージの共有ができた。これは頑張りたいですよ。何かが起こせる、そんな予感も生まれました」

おそらく、みなさんが最初のミーティングを経て、ヒアリングやプロトタイピング、調査などに取り組んで行くことでしょう。また、その成果を持って、次回以降のセッションに再びテーマを持ち込んでくる参加者もいるかもしれません。今日のプロジェクトがそれまでにどんな変容を見せているのかも、楽しみです。



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