OUR FUTURES

このストーリーは

プロジェクト 「 フューチャーセッションズ未来勉強会

から投稿されました。

私たちの暮らしに無くてはならない「デザイン」。

最近はプロダクトデザインや設計といった範疇にとどまらず、デザイン思考やデザイン経営など、広義で「デザイン」という言葉が使われるようになってきています。

第8回目となる「フューチャーセッションズ未来勉強会」は、富士フイルム株式会社 UI/UXデザイナーの石垣純一氏をゲストに迎え、「私にとってのデザイン〜デザインとは何か?/デザインはどんな方向へ向かうのか?〜」というテーマでセッションを行いました。

本レポートでは、そのセッションの一部をご紹介します。



デザインとは「くらしを良くしようとしている活動すべて」

 

デザイナーとして、これまで様々なプロジェクトに関わってきた石垣さん。学生時代も含め、その対象はプロダクトデザインからサービス、UI/UX デザインまで多岐にわたります。
また、メーカーで働く人たちと立ち上げたものづくりサークル「つくるラボ」のメンバーとしてハッカソンに参加し、数々の受賞もされています。

デザインをツールとして目の前にある課題に取り組み、常に次に作るべきものを考えている石垣さんが考えるデザインとは、どういったものなのでしょうか?

次の5つがキーワードとして挙げられました。

  1. 心地いいもの
  2. 課題を解決するもの
  3. 新しいもの
  4. 伝わるもの
  5. つくること、伝えること


石垣さん:

「例えば、肌身離さず持っている人も多いiPhone。形状は四角形の角を丸くしたものですが、ただ角を取っただけではなく、人の錯視を感じさせないために複雑にアール(曲線)を組み合わせて設計されています。

そのため、製造工程には手がかかりますが、細部までこだわった独自の曲線が、他には無い心地よさを感じさせ、結果としてシンプルで良いと評価される製品になっています。」


また、「つくるラボ」のメンバーと作った「danna dashボタン」。

夫婦間での"お使い(お買い物など)"を忘れないように、奥様が冷蔵庫に貼り付けたボタンを押すと発電して旦那様に信号を送って注文ができるというデバイスで、会社帰りに自宅に近づくとキーホルダーが受信して買い忘れを防止するというものです。

これは夫婦間のコミュニケーションを促すツールでもあり、つくることを通して伝えることをデザインしています。

最後に、私にとってのデザインとは、「くらしを良くしようとしている活動すべて」として、インスピレーショントークを締めくくりました。



デザインの役割と目的について考える


参加者が2チームに分かれて、まず「デザインの役割とは?目的とは?」についてブレストし、「デザインとはこういうことなのではないか」ということを話し合いました。


いくつかの意見をまとめると以下のようになります。

デザインとは、

  • 暮らしを良くする、個性を表現する、人と人をつなぐもの。
  • 定義するならば、デザインとは設計すること。
  • 課題を解決するために作ること。
  • 今まであるものに対して、定義や当たり前を壊していくもの。新しいことに挑戦するためのもの。


 


デザインの過去、現在、未来


次に、過去から現在、そして未来に向けてデザインを1.0、2.0、3.0とフェーズに分けて考えた時に、「どういう軸があるのか」「それぞれの違いは何か」ということを考え、全体で意見を共有しました。


石垣さん:

デザイン1.0はクラシカルデザインと呼ばれている「デザイナー」という職業が定かであった時代。2.0が現在。これまでそうでなかった人もデザイナーという肩書きを名乗り、結果として一部の1.0のデザイナーは一種のやりづらさを感じてしまっている。そこから3.0を考えた時に、多様化する流れは止まらず、さらに多くの人が「デザイナー」になる。

デザインすることが一般的で、当たり前になると、「デザインする」という動詞さえ無くなってしまうのではないでしょうか。


参加者Aさん:

これからはデザインの意味が広がっていくと思います。デザイン1.0は課題解決するものでしたが、2.0は課題を見つけることもデザインとなっています。3.0は皆が思っていることを形にするのがデザイン。デザイナーが当たり前になり過ぎればデザイナーはいらなくなります。


参加者Bさん:

事故を起こさない、見やすい、という人間中心のユニバーサルデザインがデザイン1.0。2.0はデザイン思考でユーザーの体験を高めて感動させるような、相手に対してプラスアルファになるもの。3.0は対象が自分自身の哲学や夢になり、やりたいことを想起して形にしていくようになると考えます。




どこまでをデザインと言えるのか?


ここで、ファシリテーターから以下のような問いかけがありました。


フューチャーセッションズ 最上:

未来のデザインの方向性について考える時に、これはデザイン、これはデザインでは無いというギリギリのラインはどこだと思いますか。


参加者Bさん:

意志があるのがデザインで、なくなった瞬間にデザインではないと思います。AIのみで人間が介在しなければデザインとは言わないのではないでしょうか。


石垣さん:

AI的なものはデザインではないと考えます。全部試してみて作るという方法はデザインらしくありません。100万通りの中から正解を作っていくというプロセスがデザインです。

 


これからデザインはどう進んでいくのか?


最後に、2つのチームに分かれて、デザイン1.0から3.0までの軸を改めて考え、未来へ向けたデザインの方向性についてプレゼンした概要を紹介します。


「氷山のメタファー」

デザイン1.0は目に見えるもの、課題の塊のようなものを解決していく。2.0は氷山に潜在していて気付かない人のために隠れている。課題を生成して心理的なものに働きかけるコトづくり。3.0は雲の上にあってモノゴト、モノガタリ、信念といった世界。自分のために為すデザイン。1.0から3.0まで共通するのは何かをつくり、そこに意志があるということだが、対象となる領域は変化していく。



「God Design」

デザイン1.0は、デザイナーが、「これがあったら暮らしが豊かになる」という皆が欲しがるモノをつくる。2.0は「Human Centred Design 」。多様なバックグラウンドをもつ人を集めてビジネスをし、誰もが暮らしやすい、身体的にストレスの無い社会を目指す。3.0は「Mind Centred Design」。選択肢の多い時代に「選ぶこと」にストレスを感じる人に対して、神的な存在を創り出して「これだけを持っていればあなたは救われる」と示すのが「God Design」。心の底から「自分が何を信じているか」を示すことでしか人を導くことはできない。





ますます多様化するデザインですが、今回は「こういうことがデザインなのではないか」というキーワードを発見し、そこからデザインが進んでいく方向性を感じ取ることができる勉強会となりました。


 


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【インスピレーショントーカー】

 

石垣 純一(いしがき じゅんいち)
富士フイルム株式会社 UI/UXデザイナー 

千葉大学大学院工学研究科デザイン科学専攻修了。2016年株式会社東芝に入社後、IoTプラットフォームブランドの立上げを推進。2017年から富士フイルム株式会社にて医療IT製品のUI / UXデザインおよび医療AIブランドのブランディングデザインを担当している。2017年から有志の社会人ものづくりサークル「つくるラボ」でも活動を始め、ハッカソンやコンテストで多数受賞。沖縄県出身。

<作品web>
https://ishiakijunichi.com/


【ファシリテーター】

 

最上 元樹
株式会社フューチャーセッションズ イノベーション プロデューサー 

2015年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。

2002年に文房具事務用品メーカーのエーワン株式会社に入社後、営業、製品開発を経験。2010年から3M Japan Group 文具・オフィス事業部のマーケティングにて、事業戦略やマーケティング戦略立案を主導したのち、2016年1月フューチャーセッションズに入社。

大手企業のイノベーションプロデュースを中心に活動し、現在に至る。

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【文・杉村彩子】


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