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プロジェクト 「 フューチャーセッションズ未来勉強会

から投稿されました。

「熱量あるコミュニティ」をつくるには? “競合”を超えて旅行業の未来を“共創”する、TICOと考える場づくり論


第6回となる 「フューチャーセッションズ未来勉強会」は、沖縄県の観光産業の未来を創造するTICOというコミュニティをマネジメントしている金城弘毅さんをお呼びして、【沖縄の未来をつくるコミュニティマネジメント〜どうしたら、競合を超えて地域全体で共創が出来るだろうか?〜】というテーマでセッションを行いました。
※フューチャーセッションズ 未来勉強会#06

本レポートでは、その場でシェアされた学びや、未来の兆しをハイライトでお伝えします。


ゲスト インスピレーショントーカー:


金城 弘毅(きんじょう ひろき)
株式会社OTSサービス経営研究所 人材開発課 課長

1991年 沖縄ツーリスト株式会社に入社後、営業・企画・添乗・海外手配業務などに従事し、旅行業勤務22年間で添乗業務経験は国内30回、海外90回以上。2014年 内閣府沖縄総合事務局経済産業部商務通商課へ出向。貿易・産業振興関連業務および各種会議・セミナー・委員会等運営にも従事。現在、沖縄型産業中学人材育成事業において旅行業におけるイノベーション人材育成プログラムのプログラムマネージャーを担当。



旅行業の未来に対する危機感


いま、日本の観光業界はチャンスとピンチを同時に迎えています。海外からの旅行者は増え続ける一方で、AirbnbやExpediaなど個人旅行を楽しめる様々なサービスが誕生し、旅行会社の存在価値は大きく揺らいでいます。

第6回未来勉強会のゲスト、金城さんも旅行業の一員として、目の前の業務を捌くことに精一杯でした。
しかし、ある大学生が発したこんな言葉から、危機感を覚えたと言います。

「観光産業と言えば、“ホテル業”と“飲食業”ですよね」

『旅行業こそが観光産業の花形だ』そう思ってきた金城さんの価値観は大きく崩れました。しかし、黙っていても観光客がやってくる沖縄の旅行業。周囲を見渡しても、危機感の無い同業者ばかりだったと言います。そして、金城さんは旅行業を変えるには、まずは次世代リーダーの教育が必要だと決心します。

そうして金城さんが立ち上げたTICO (Travel Innovators’ Club Okinawa)は、内閣府が推進する「中核人財育成プログラム」をきっかけに集まった『沖縄の旅行業の次世代リーダーが集まるコミュニティ』。

業界内の競合関係を超えて、沖縄の観光産業にイノベーションをもたらすことを目的に立ち上がりました。



コミュニティの「熱量」を高めるもの


そんなTICO、注目すべきポイントは、コミュニティの熱量の高さです。

TICOで開催される研修プログラムの参加率は90%を超え、メンバーのエンゲージメントが極めて高いのです。また、このコミュニティの中から、旅行業の枠を超えた様々な新しいチャレンジが誕生しています。

例えば、旅行会社同士のコラボレーションによる「新たな旅行ツアー」が企画されたり、沖縄の新しい食コンテンツとして「沖縄炎熱カレー」が考案されたり、オーストラリアに進出した沖縄発のレンタカービジネスの事業部長にメンバーが就任するなど、旅行業界を革新する、様々なアクションが生まれている点でもユニークです。

コミュニティを作ったとしても、メンバーをうまく巻き込めず、形骸化してしまうことも多い中、なぜTICOここまで高い熱量を持ち、活動し続けられるのでしょうか。


金城さん:
「私たちは、『ハートに火をつける』というのをずっと合言葉にしていました。

上から『やれ!』と指示されて学ぶのではなく、『よし!やるぞ!』と自ら学びたくなるような気待ちにできれば、どんどん新しいこと考えようっていう気持ちにみんながなるんじゃないかな、ということを信じています!」


沖縄の観光産業について、丁寧に参加者へ説明する金城さん


ハートに火をつけるために、金城さんが行ったのは、本当に小さくて単純なことでした。

金城さん:
「十数回ある研修の中で、毎回飲み会をやったんですが、そこでこだわったのが研修が終わる頃にビールがキンキンに冷えていて、熱々のピザが食べられるように注文時間を計算して調整することでした(笑)」

「他にも、みんなで海を見ながら、ご飯を食べる時間を作り、研修が思い出に残るようにしたり。(笑)

また、講師がプライベートで沖縄に来る際は、お休みの日でもドライブに行って観光案内したりとか。TICOのメンバーが転勤するときには、みんなで集まって送別会を開いて、会場には研修の思い出の写真を貼ったり。やっぱりこういうのって嬉しいと思うんですよね」

「あとは、プログラムを修了した証として、修了証っていう本格的なネームカードを作ったんですけど、その時に市販の着火剤も渡したんですよね。あなたはこのプログラムでハートに火がつきましたねっていうメッセージを込めて(笑)」


こう聞くと、「えっ、そんなこと?」と思う人もいるかもしれませんが、参加した人がいかに心地よく、そして楽しめる場になっているか。そんなホスピタリティの精神で、参加者のエンゲージメントは高まっていったと言います。

フューチャーセッションズの上井さんは、金城さんがコミュニティの熱量を高める上で果たした役割についてこう話します。

フューチャーセッションズ 上井:
「僕らはコミュニティを作る方法やファシリテーションの手法をレクチャーする形でサポートさせてもらったんですが、それだけじゃここまでの熱量って生まれないんですよ。

ピザが冷めないようにとか、ネームカードとか細かいところは全てが金城さんのアイデアと行動力で生まれていて。それがあったからこそ、こういうつながりができたんだなって思います。

みんなを喜ばせるために、些細なことでもできることを次々とやっていったからこそ、みんなが『金城さんのために!』という感じで繋がっていったんだなと思います。結局、コミュニティは人なんですよね」

「今回のプログラムにはベンチャー界で有名な起業家とか豪華な講師陣が集まったんですよ。そんなメンバーがみんな口を揃えて言ってたのは、「金城さんだから来ました」

やっぱりブレない情熱が金城さんにはすごくあって、確固たる思いを常に持っていたので」



(照れて謙遜する金城さん)


フューチャーセッションズ 上井:
「こういうポスピタリティの高いリーダーシップって、今の時代にすごくフィットすると思うんです。この雰囲気に、大なり小なり孤独感を持つチャレンジャーの人たちがグググっと集まってきて、金城さんのためにやってやろう!と膨れ上がり、大きなインパクトを生み出していくのだとと思います。

そして、こういった活動って、1人の人間として力強くなくて良いと思っていて、ワクワクするような、みんなへの呼びかけ」から始まり、「集まった人たちの強みを掛け合わせてやっていこう」というスタンスが、こういう活動になったんじゃないかなと思います」


また、金城さんのパーソナリティもTICOという熱量の高いコミュニティを作る上で欠かせなかったと言います。


フューチャーセッションズ 上井:
“いじられる”というのもポイントだなと思っていて(笑)。もし金城さんがスーパーな人だったら、『なんか人材育成とか上から言ってるわ』って思われて、もしかすると周りも少し距離をおいていくと思うんですよ。

でも金城さんは、年下の私たちから見てもとてもチャーミングなところがあり、みんなから『それは違うでしょ!』とツッコまれたり、時々空回りをしたりして、それでも強い想いがあるから、みんなも付いて行ったんだと思います」



「ワクワク」がコミュニティの求心力を高める


また、コミュニティが熱量を持つ条件として、「ワクワク感」という要素があるとフューチャーセッションズの最上は言います。

フューチャーセッションズ 最上:
「先ほどワクワクという話がありましたが、金城さんが考えるワクワクってどんなものですか?」

金城さん:
「僕が考えるワクワクは、このままだと10年後には旅行会社なくなるかもという危機感の中で、この研修に参加すれば何か変えられるかもしれないと思えたことなんですよね。それがワクワク感だと思います」

フューチャーセッションズ 最上:
「面白いですね。辞書で調べると、ワクワクとは『期待感』だと書いてあるんですよね。つまり未来に対して期待できる時に、人はワクワクするらしいんです。私は、その際に重要なのは、その未来をイメージできるかだと思っています。

私たちがTICOのメンバーとご一緒させて頂いた際には、私たち自身がファシリテーターとしてワクワクできる未来のイメージをしっかりと持ち、『みんなで絶対に面白い未来を一緒に見るぞ!』という本気の気持ちを持っていたので、参加者も『この人たちについていけば面白いことが起きるんじゃないか』と期待感を持ってもらえたのではないか、と思っています。なので、私は本気で未来を考える先にワクワク感が生まれるんじゃないかと思っていますね」


コミュニティの核となるファシリテーターやコミュニティマネージャー自身が、ワクワクできる未来像を持ち、それが参加者にも伝播していくことで、人は場に惹きつけられ、熱量も高まっていくのかもしれません。




イノベーションは旅行から生まれる?


話は、コミュニティづくりにおいて大切なことから、金城さんが考える「沖縄の旅行業の未来」に移ります。

金城さんが、旅行業のあるべき理想像の1つとして、注目するのは、「ワーケーション」。

ワーケーションとは、仕事(ワーク)をしながら、観光(バケーション)を楽しむ、新しい旅行の形で、地域活性化や人工分散化にもつながるため、国や沖縄県も推進しているそう。



金城さん:
「僕は沖縄に旅行に来てもらって癒されながら、個人としての成長や学びにつながるような価値を提供できたらと思っています」

「ただ、ワーケーションというと日本全国で推進されつつあって、手垢がつき始めちゃっているので、リゾートでイノベーションを起こすというコンセプトで『リゾベーション』というものをやろうとしています」

「イメージでいうと、海の近くで仕事をしながら、共創の場をつくることで、社員がリラックスできるだけでなく、地域との交流から新しいものを生み出していく。

また、沖縄の地域課題である空き家を、企業のサテライトオフィスとして使ってもらうことで、地域にも企業にもWIN-WINの仕組みをつくれないか考えていたり。空き家を自分たちの手でリノベーションすることで、チームビルディングにもなるし、サテライトオフィスが沖縄にあることで、企業としては採用ブランディングにもなりますよね」

「一見旅行に見えるかもしれませんが、これらは旅行じゃないんですよね。リゾベーションという新しい旅や仕事のスタイルであって、こういった新しい市場をつくろうとしていて。旅行商品として売るのではなくて、企業に価値を提供するということを考えています」


ビジネスパーソンが旅行しながら、地域と繋がり、新たなビジネスアイデアが生み出されるという、全く新しいスキームを築こうとしている金城さん。

これに対して、フューチャーセッションズ最上も旅行業が秘めるポテンシャルについてこのように語りました。


フューチャーセッションズ 最上:
「旅行業の人は朝から晩までその地域を楽しめるような旅行プランを作れる、コーディネートの達人だと思うんです」

「そのコーディネートのスキルと、ファシリテーションのスキルを学べば、地域の方を招き入れたアクティブラーニングのコンテンツコーディネートを行って、地域の良さを発見したり、学べる機会を提供したりすることができるんじゃないかなと思います。そして、こういった流れ進めば、旅行業が徐々に教育業の領域に参入することもできるんじゃないかと思うんですよね」


地域のことを誰よりも理解し、キーパーソンとのネットワークをもつ旅行会社だからこそ、地域と外部者をつないで新たな価値を生み出すファシリテーターとしての役割も担えるのではないか。

そんな旅行業の未来の兆しが垣間見えたセッションになりました。



最後は、参加者の方々から感想をいただいて、チェックアウト。


自治体  総務部門 Kさん:
「コミュニティというと町会や自治会のような強制的なイメージがあったが、本当のコミュニティってこういうことなんだなと思えた。」 


化学系メーカー 財務 Sさん:
「内面にある思いや熱量を引き出すっていうのが集まることの意味、価値なんだなと思いました。ぜひ沖縄でリゾベーションをやってみたい」

 


製造業   経営企画部門 Oさん:
「自分は何がやりたいのか、根底にある危機感とか、どういう事を実現したいのかという思いがあるとコミュニティはうまくまわるんだなと感じた」 


コミュニティマネジメントやファシリテーションというと、何かとその手法論に目が向けられがちですが、金城さんが教えてくれたのは、どれだけ場にコミットできるか、参加している人たちのために汗をかけるか、という極めてシンプルでともすれば地味にも思えることでした。

しかし、そういった地道な働きかけ無くして、熱量のあるコミュニティは生まれないのではないか、そんなコミュニティマネジメント論の本質を、今回のセッションから体感することができました。




次回、第7回未来勉強会では、

株式会社Tポイント・ジャパン 瀧田 希氏をお呼びして、「地域の声から始まる”みんなのソーシャルプロジェクト〜地域をより良くする本質的な価値(アクション)とは?〜」というテーマでセッションを開催します。

→第7回未来勉強会の詳細はこちら

ご興味のある方は、ぜひこちらにも参加してみてはいかがでしょうか。



ファシリテーター:


上井 雄太(うわい ゆうた)

株式会社フューチャーセッションズ イノベーション・ファシリテーター 

慶應義塾大学卒業後、株式会社デンソー勤務を経て、2013年5月に株式会社フューチャーセッションズの掲げるビジョンに共感し入社。 2013年9月には当時日本人最年少でIAF Certified Professional Facilitator(国際ファシリテーターズ協会認定プロフェッショナル・ファシリテーター)を取得。  現在は、企業の新規事業創造や組織変革、行政の社会課題解決やまちづくりなどの年間80回を超えるファシリテーションを実施。 ラグビーワールドカップ2019レガシー創造セッション、Jリーグ25周年記念セッションなどスポーツと、企業、行政、NPOを掛け合わせ、新しい価値を創造するプロジェクトにも携わる。 



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