OUR FUTURES

2014年1月16日、「第一回釜石・大槌まち未来会議フューチャーセッション」が釜石・大槌産業育成センターで開催されました。このフューチャーセッションは、「新しい東北」先導モデル事業として、釜石型ものづくり新規事業創出を目的に企画されたものです。少子高齢化やエネルギーの自立などの地元の抱える課題を考え、持続可能な地域育成を目指すために特定非営利活動法人アットマークリアスNPOセンターと釜石・大槌地域産業育成センターと一緒にプロジェクトを推進しています。

日本の近代製鉄を支えたものづくりの歴史を持った釜石は、地域のものづくりを通じてオリジナルの商品を生み出そうと「新製品開発研究会」が結成され、動き出しました。そこで、「新製品開発勉強会」をベースに、フューチャーセッションを通じて、多様な人たちの連携を通じたアイディアの創出や事業化、そしてさらなるアイディアを生み出すために市民が主体となって対話を重ね、そこから新しい産業を生み出そうとする試みで、以下の3つをポイントとしています。

■関係性構築
組織・地域の壁を超えた横のつながり、新たな関係性を構築する
■価値創造
地元ならではの新たな産業を生み出し、地域の活力を創造する
■次世代発掘
思いを持った次のリーダーを見える化し育成する

同時に、フューチャーセッション文化を地域に広げ、市民自らがアクションを起こせる土壌をつくりだしていこうとするのが目的です。

今回は、全5回のフューチャーセッションを通じて釜石の未来を考えてアイデアを形にし、最後は年間計画などの実行フェーズに落としこむことを目的としています。今回は、その第一回セッションの様子をレポートしたいと思います。


チェックイン〜まちの強みを考える

一回目のセッションでは、「まちの共通言語をつくる」というテーマのもとに、参加者全体で釜石の未来の姿のイメージを共有できるシナリオを作成することを目的としました。
まずはフーチャーセッションズの有福より、フューチャーセッションについて説明させていただきました。

「フューチャーセッションは、多様な人たちが集まり、一緒に未来を描くプロセスを提供する場です。つねに問いを開き続けることで、参加者自身が目的を創りだし、主体的にまちのために行動することを促すきっかけの場なのです。そのため、この5回のフューチャーセッションを通じて参加者同士が真に対話し、関係性をつくり未来のための協働的なアクションを引き出すことが大事なのです」

まちの未来を考えるために、今ある課題や技術をもとに作り出す確実な未来ではなく、参加者全員が考えて描き出す、それまでとは違った未来像に向けて歩き出そうとする、バックキャスティングの発想が大事だということを話しました。

有福の説明の後は、まずは参加者同士の自己紹介を踏まえたアイスブレイク。その後の「ゲストトーク」では、自分たちの強みをみつめなおすために、釜石・大槌で活動している3人のゲストから、実際の釜石・大槌の現場で起きている課題をもとに、まちで何がしたいのか、いま何が不足しているのか、を共有していただきました。

製造業の立場からは「釜石の製造業からオリジナルのものづくりを行ない、若い人が自社から面白いものを作ってくれるためにどうすればいいか?」ということをお聞きしました。高齢化も進んでいる中、ものづくりを楽しいと思う若い人をどう増やしていくかが課題だと話します。

商店街で活動されている立場からは、震災によって大きな被害をうけた商店街を中心に、人口が減っている地域をどのように人口を増やしていくか、を課題としているとお聞きしました。「足りないものは、一緒にまちのために行動する人。アイディアをもとに一緒にやれるようになれば街は面白くなる」。海や山といった特色ある地域の釜石に誇りを持った人たちがどのようにして釜石に集まってくるかを考え、取り組んでいきたいと話します。

大槌の復興団体で活動されている方からは、若い人たちを中心に、対話を通してビジネスや人間関係が生まれる可能性を追求している、復興計画に主体的に参加し、対話の場を通して未来を作ることの大事さを多くの人が知って行動してほしいとお聞きしました。「誰かと会って夢を語る、そんなわくわくすることが当たり前になるようなまちにしていきたい。新しいものが生まれるまちであることが、これから大事」と話しました。


まちの課題を共有化する

「ゲストトーク」終了後は、参加された方々と一緒にセッションを行ってきます。ここでは、【自分たちの強みを見つめなおす】というステップのなかで、自分たちのまちの「本当の困りごと」は何か、どんな人がどんな困りごとをもっているかを共有します。各テーブル毎に、それぞれが考えるまちの課題について、それぞれが思い思いに書き出しました。

・若い人が働く場所が少ない
・若い人が町に残りやすい環境になっていない
・住んでいる人が楽しむ場所が少ない
・外から見た人にとって魅力を生かしきれていない
・アイディアの面でも、マンパワーの面でも人材が足りない

などなど、参加者それぞれが思うまちの課題について意見をだしていただきました。


釜石の2020年を考える

その次のステップでは、そうした困りごとを踏まえた上で、自分たちのまちの【ビジョン(ありたい姿)を考える】ということで、未来の釜石・大槌、例えば2020年にどのようなまちになっていればいいか、どのような「まち」にしていきたいかを考え、ありたい姿をグループで共有します。

さきほど、それぞれにまちの課題を出していただいたからこそ、その課題を解消し、釜石・大槌がこうあってほしい、こんなまちに住みたい、といった意見が交わされました。参加者それぞれが思い思いに描く釜石・大槌の未来。そこで、自分が本当になっていればいいと思う2020年の釜石・大槌を、「一言」で表してみることにしました。自分が思う未来の釜石・大槌、その中が描く形と自分自身が貢献できそうな領域を踏まえて、「公園が中心で、街中に人があふれている釜石・大槌」といったように、一人1枚でまちの未来について紙に書き出してもらいました。

それぞれに書きだしてもらったら、次は自分が書いた紙を掲げ、できるだけ多くの人と見せ合いながら、参加者全員でそれぞれが考えているまちの未来について共有しました。さらに、自分と書いている人が近い人、書いていることは違うけど、一緒にやると面白そうな人、もしくは、いったん自分の意見を書いたけど、自分の考えをやめて別の人の良いアイディアに乗り換えるなどしながら、4−5人のグループを作ってもらいました。

みなさんそれぞれに、特徴のあるコピーライティングをしたりプレゼンしながら見せ合ったりするなど、それぞれにまちのことについて発表しながら、自分の意見と近い人たちでのグループづくりを行ないました。


まち紹介カードを通じたイメージの可視化

グループを作ったあとは、【ビジョンを伝わる形にする】というセッションのもと、それぞれのグループで意見を集約しながら、2020年の釜石・大槌の未来の「まち紹介カード」をグループで作成してもらいました。

・まちのタイトル
・誰が
・なぜ
・どんな場所で
・どんな活動をしているのか
・実現のために必要なこと、人は誰か?

といった項目をもとに、それぞれが考えたまちの未来について書き出してもらいながら、より具体的なアイデアにブラッシュアップさせました。

それぞれのグループごとに2020年の釜石・大槌の未来についてのアイデアが決まったところで、全体共有の時間です。全部で7チームができたグループそれぞれに、最終的に決まった内容をプレゼンしてもらいました。

・協創により多くのイノベーションで世界を驚かせる街
・最大瞬間「人口」が日本一の街
・いいべえ釜石!
・全員死ぬまで活動できる
・心豊かに暮らせる循環型社会
・ちょいハミでも居心地イイネ!
・地元の資源で“楽しさ”をつくるまち

といった7つの未来がでてきました。それぞれのプレゼンも、3分という短い時間の中で趣向を凝らしたプレゼンを行っていただき、笑顔あふれるプレゼンとなりました。これで、第一回のフューチャーセッションは終了となりました。約3時間のセッションながら、あっというまに時間も過ぎてしまいました。


チェックアウト〜第二回フューチャーセッションへ
次回からは、このアイデアをもとにして、自分たちがまちのために取り組むべきテーマを絞り出すセッションとなります。

一回目のフューチャーセッションは、参加者それぞれの思いや考えを共有することに重きを置いたセッションでした。おかげで、参加者それぞれが描く2020年を知ることができ、またそれぞれに違った視点からまちの未来を考えようとしていることがわかりました。普段、まちのことやまちの未来について話したりするようなことがなくても、こうした場を通じて、リラックスした状態でみんなと未来に向けて対話をしていくことが、まちの未来にとっての第一歩となります。


構成・文/江口晋太朗(マチノコト) 

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