OUR FUTURES

創造的で、満足度の高いフューチャーセッションを実施するならば、多様な参加者がオープンに対話でき、深い関係性が生み出される場になるよう気をつけたい。
参加者の創造性を喚起し、よいアイデアを生み出す場の力の可能性を探るべく、未来のオフィスを研究している株式会社イトーキ オフィス総合研究所の谷口所長に、フューチャーセッションを実施する際のコツを聞いた。

 
 
ーー書籍「MAKE SPACE」には、フューチャーセッションの運営にも参考になるのでしょうか?
 
Facebookやgoogle、appleなどのイノベーション企業に多くの人材を輩出しているスタンフォード大学d.schoolを調べていく中で、人々が創造的になるには空間が大事だということに気がついた。リアルな空間があってはじめて、みんなが集まる意味が出てきて、チームで早く・多くのアイデアを出すことが可能になる。このプロセスと空間設計の研究成果をまとめたものが、「MAKE SPACE」。
イノベーションを起こしていくプロセス、方法論と、それを支え創り出していくための空間が研究されいている書籍で、これからの日本に必要なヒント集になると思っている。書籍の中では、幅広くイノベーションを生み出すための方法論や空間設計の事例が紹介されているので、フューチャーセッションをどう設計し、運営するかにも使えると思っている。
 
 
ーー「MAKE SPACE」の中では、スタンフォード大学d.schoolの手法が紹介されていますが、フューチャーセッションとの共通点は何でしょうか?
 
フューチャーセッションと、d.schoolの共通点は、本来誰もが持っているクリエイティブな能力を引き出し、その能力を生き生きと使えるようにするプログラムだと考えている。自分が何のためにいきているか、働いてるかということが、自分で感じられる、気づかせてくれるプロセスになっている。それは、日本の閉塞感を打破し、一人ひとりが、具体的に何をしていくのかを見つけるヒントになると思っている。学校だけでなく、会社や行政などのあらゆる組織で、発想を変えるツールとして使ってほしい。
 
 
ーー「MAKE SPACE」の中から、フューチャーセッションを実践する人たちが、簡単に取り入れて、有効なことはありますか?
 
テーマやメンバー構成、セッションを何回行うかでも変わってくるが、「フレーム」があると、参加者同士の共通言語、共通概念が持てるので、対話がしやすくなる。
フレームありきだと固定概念になる可能性もあるが、時間を短くするための手段として活用してみるとよいと思う。
 
また、以前に会議の時間を短くするために「立って会議をする」という方法が流行ったことがあったが、このように時間の効率化ではなく、参加者が平等にアクティブに行動するための場として、立って会議をする方法がある。
「テーブルと椅子を用意しブレストするグループ」と「テーブルと椅子がなく、付箋を壁に貼りながらブレストするグループ」の違いを実験した。明らかに違いが出て、後者の壁に向かってブレストするチームの方が多くのアイデアが出る。場も盛り上がり、積極的な人とそうでない人の差が出にくかった。
多くのアイデアをみんなで出したい場合は、立って、壁にむかって、ブレストしながら貼っていくというやり方が有効だと思う。
 
さらに、自分たちが出しているアイデアだけでなく、他のチームのアイデアもわかる、見えるようになっていると、お互いが刺激を受けあう。このように全体を共有することで、アナログの思考回路が触発され、新たなアイデアを生み出すキッカケになる。
 
 
ーーアイデアを出して、まとめていくときのコツもありますか?
 
アイデアを具体化する、プロトタイピング(試作)するときも、今までのオフィスでの仕事とは進め方が違う。デザイナーや開発部門など一部の専門性ある人の仕事と思われていたが、多様な人たちと手軽に気軽にアイデアを形にしてみることが大事。言葉ではなく、形にして、わかりやすくして共通認識を形成するということが目的。
その際には、空間の中に、紙やねんど、遊び道具などさまさまな材料を身近に用意しておくといい。
 
 
ーーフューチャーセッションをする空間そのもので気をつけるポイントはありますか?
 
空間に変化があると、行動が変わり、アイデアの質も変化していく。
固定化された家具ではなく、フレキシブルにしておいて、移動や組み立てができるようにしておき、アイデアの発散や収束の場面に合わせて、自由に空間やレイアウトを変更できるようにしておくのがいい。それも自分たちで、自らすぐできるということが大事。
 
広い空間の中で、発散エリア、収束エリアなど、役割を分けるやり方も有効。広さが取れなければ、装置や家具を移動しやすいものにして、自分たちでその場ですぐにレイアウト変更する。
 
お金をかけて立派な空間を作ることが大事なのではなく、自分たちで空間さえも作っていけるんだという意識でやる、最小限のお金と設備でクリエイティブに対話できる場にしていく。今あるものをいかにうまく使っていくかがクリエイティブであり、サステナブル。
 
部屋にこだわる必要もなく、付箋やペンなどの最低限の道具があれば、公園でもセッションができる。意外な場所が、楽しくていいアイデアが出る可能性もある。テーマに合わせた場所を発見するところから、セッションのデザインは始まっている。
 
どういう場所で、どういう対話をしようか?とクリエイティブに考え、誰もが持って生まれた能力を発揮できる創造的なセッションが、1つでも多く生まれることを期待しています。
 
 
プロフィール
谷口 政秀(たにぐち まさひで):株式会社イトーキ オフィス総合研究所 所長。1982年株式会社イトーキに入社。PJ推進、オフィス空間設計部門、商品開発部門を経て、2001年ネットスタイル社を起業し、Webサイトと銀座にインテリアショップを開店する。2011年より社会変革を調査し未来の働き方、働く場について研究を行っている。
 

聞き手・構成・文/有福英幸(OUR FUTURES編集長)

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