OUR FUTURES

アクションを生むセッションをデザインする。ー Child Future Session主宰 小笠原舞さん

昨年のFuture Session Weekから立ち上がった「Child Future Session」。子どもたちにいい社会をつくることを目的に、多様なステークホルダーを巻込みながら継続的にセッションを開催されています。

今年のFuture Session Weekで4回目のフューチャーセッション開催となりましたが、その間にもセッションから生まれたプロジェクトの具現化や、新会社の設立などエネルギッシュに展開されてきています。
今回は、Child Future Session主宰の小笠原舞さんに、セッションから生まれたアウトプットを具体化する秘訣や、セッションを継続展開する方法をお聞きしました。


ーーFuture Session Weekで4回目の開催となりましたが、昨年の1回目と比較してどう進化しましたか?

初めてセッションをするまでは、自分自身の課題が漠然としていました。1回目はとにかくやってみたという感じです。
セッションを通じて、自分のやりたいことがクリアになりましたし、課題の整理になりました。
ただ対話して終わりではなく、参加者の皆さんのアクションにつなげていくにはどうすればいいのか、という課題意識がありました。
試行錯誤しながら回を重ねることによって、どういうテーマでやれば、みんなのアクションにつながるか、つかめてきました。
子どもたちのために、いい未来をつくるには、人の行動をどうデザインすればいいのかわかってきました。


ーー行動をデザインするということですが、セッションのやり方も変わりましたか?

1回目のセッションは、対話することがメインでした。「教育」「家族」「まち」などの12のテーマで、子どもを取り巻くさまざまな問題を知ってもらい、個別のテーマを深める場でした。
2回目、3回目のセッションを通じて学んだことは、参加者の思いと自分の思いにズレがある、ということです。どっちが良い・悪いではなく、「子ども達にとっていい」という保育士としての私の目線と、保育現場以外の人の目線のズレを感じました。
「子どもたちのために」というテーマでセッションをしても、参加者自身の自分ごとになってもらう、気持ちが入るようにするには何かが足りませんでした。

フューチャーセッションをやってみたいというところから初めて、ただ対話するのではなく、具体的にどう行動を変えるか、イノベーションを起こすかまで考えるようになりました。セッションの設計は、この1年で大きく変わりました。
今回の4回目は、自分ごとになるように、セッションの中でアウトプットを作るところまで目指しました。このセッションで生まれたアウトプットをこれから個別に具体化していくことになります。


ーー小笠原さんご自身は、1回目のセッションのアウトプットをプロジェクト化されましたね。

セッションの中で、具体的にやりたい構想をお話しして、一緒にやろうという人が出てきてくれました。仲間が2人できたんです。対話を通じてチームになりました。
そこで「asobi基地」というプロジェクトが誕生しました。
子どもにとっては自分自身を知り、自由に表現できる場であり、大人たちにとっては、子どものもつ力をどのように引き出すかを実践し、家庭での子育てが楽しくなり、さらには「子どもの視点」で遊べるようにする場をイベントや出張サロンとして、1年間で約40回実施してきました。
これまで任意団体でしたが、より大きな取組みにしていくことを目指してNPO申請もしました。


ーーセッションやプロジェクトを継続展開させるためのコアチーム作りがとてもうまいと思います。

私自身、多様性のある社会を作りたいと考えていますので、それをチームで実践しています。チームだと1人でやっているのではできないことができます。
自分の思いをみんなにわかりやすく伝えています。そうすると周りの人の動きやすさが変わります。そして理念に共感してくれる人、自分が感じている課題に反応してくれる人が集まってくれます。

現在、チームメンバーにすごく恵まれていて、私がやりたいことを応援してくれています。子ども業界以外の人、専門家、学生、親御さん、いろんな人たちの幅が広がって役割分担がうまくいっています。
自分が迷っても、本来やりたかったことに戻してくれます。これが同じ業界の人だけだと同じ目線になってしまっていたでしょう。

そして、言ったことを必ず実現すると、人は応援してくれたり、アドバイスをくれます。やり続ける、形にするのは体力がいりますが、実行して発信し続けると仲間が増えていくんです。人が巻き込まれてくれる。
止まったら全部止まってしまうので、言い出しっぺである私は止まってはいけないと思っています。
そのために大事にしているものに「現場」があります。


ーー「現場」とはどのような場所でしょうか?

私の場合、保育士でもあるので、保育園やasobi基地は現場であり原点です。現場には、新しい子どもたちがどんどん来てくれます。大人も子どもも楽しんでいる、コミュニティ本来の姿を感じています。
保育園では、子どもたちの健康状態、心理状態をみて、今何のサポートをするか、子どもたちと何をするか、はたまたどんな種をまくか、その場で判断していきます。
その中で、1人1人の個性を見ていき、やりたいことを一緒に見つけたり、できる場を用意したりします。また、集団生活なので協調性も大切で、チームをつくる、コミュニティをつくるということもしています。子どもという感情をストレートに表現する存在にどう対応するか?こういった現場で日々鍛えられているのを実感します。

保育園でやっていることが、大人の世界でも適応できるやり方があると思っていて、社会に開いていきたいと思っています。
もちろん保育士さんが全員できるかわかりませんが、保育士の方が経験値を活かして、保育士以外の新しい道を目指していける可能性を示したいと考えています。
子どもの未来をプロデュースする働き方として、保育士の可能性を社会に活かしていきたいと思っています。
このスキルを社会のいろいろな場面に還元できれば、保育園以外でも働けたり、大きな視点で子育て支援を担っていけると考えています。
現場で感じて、いろいろな人の声を聞いて、形にして、子どもたちにいいものをつくっていく、この循環を作りたいです。


ーーまさに保育士の新しい可能性として「こどもみらい探求社」を立ち上げられましたが、経緯を教えてください。

オトナノセナカ」という、対話をしながら、子どもを取り巻くオトナたちが「自分らしくいる」機会を提供する場を共同で運営していたフリーランス保育士の小竹めぐみさんと一緒に立ち上げました。
保育士が会社を作り、新しい働き方で、自分たちの専門性を社会に伝えていき、今までにありそうでなかったものを企業と一緒に作り、子育て支援をもっとよくしていくことを目指しています。
「保育士×社会デザイン」という視点でチャレンジしてみようと思います。社会をイノベーションする時に、子ども目線で考えられるように、いろいろな人たちと恊働して形にしていきたいと考えています。
待機児童の問題もあって、保育園が増設されていますが、保育士は現場(保育園)を離れると資格や経験を活かせる仕事がなかなかないので、保育士がさまざまな場面で活きる社会、働ける社会にしていきたいと思っています。


ーーセッションやプロジェクトを進化させ継続する秘訣として、現場からのフィードバックが重要なことのように思えます。

現場で実践しているからこその、具体的で力強い意志が培われます。周囲も現場をちゃんとやっているのか見ています。何かを伝えるにしても相手への響き方や、その後のアクションが全然違います。
実践する、現場にいるのが絶対に大事です。そこがなくなると自分の実体感がなくなってしまいます。
現場の重要性を保育園で実感していますし、可能性があります。これからを担う子どもたちのいとおしさも感じられます。

子どもたちを見る、触れる現場としての保育園やasobi基地。
その現場から感じ取ったものを活かし、子どもたちにいい社会が何かを考え続ける場としてフューチャーセッションがあります。現場で感じたことをどう考え、どう伝えるか、1つのメディアのようなものです。


ーー現場から、子どもから学ぶことが大きいですね。

子どもは、縄跳びだったりかけっこだったり、できるかわからないけど、チャレンジします。できるまで何度もチャレンジします。そこに学びがあると思います。子どもだけでなく、大人も学ぶべきです。
大人になると歩けて当たり前と思ってるけど、子どもの時は「立った!」とよろこんでいたはずです。人間の原点に戻ることが大事です。
最初の一歩をなかなか踏み出せない人は、まずは10人でもいいから小さくセッションをやってみることが大事だと思います。

子どもたちのコミュニケーションは直球です。イヤなものはイヤ。人間の本質的なコミュニケーションです。大人もそういうコミュニケーションができるようにしたい。子どもたちが遊びの中で学んでいることを大人も学べるはず。
保育園、幼稚園ではしっかり遊びますが、小学生からは、「遊びなさい」から「勉強しなさい」になり、評価されてしまいます。遊びの中では、自分が気づいたこと、発見したことを、自分で研究していくことをやっています。
もちろん遊ぶように仕事をしている人もいますが、もう一度大人の社会でも「遊ぶ」を捉えなおしたい。子どもたちをリスペクトすると見えてくるものがあります。


ーーそこまで子どもにこだわる理由を教えてください。

子どもたちは、私自身の人生を変えてくれた、モチベーションの原点です。
子ども1人でもなにか影響を与えることができたら、きっとその家族も何かが変わり、その子が大きくなったら、その子の周辺が変わると思っています。今、ガラっとは変わらなくても、ちょっとずつ大きく変わる可能性があるのです。

私のやろうとしている、現場をもってその知恵を社会に生かす仕事ができるようにする新しい働き方は、他の保育士はもちろんですが、これからの人の生き方として、後につながってくれたらうれしいです。
いろいろな分野の人が実践していくと日本がよくなるかもしれません。変えていけるところから、変えていきたいです。


ーー次回のフューチャーセッションの予定があれば教えてください。

アクションにつなげるという所は変わりませんが、企業の人を集めたり、保育士を一堂に集めるなど、ステークホルダーが違うものになると思います。
3年前であれば、保育士を集めるイベントをやっても人が来なかったと思いますが、今であればフューチャーセッションに来てくれる環境になってきていると感じています。

また全く違う視点で、子どもの権利条約を読み返すシンポジウムも考えています。
行政の方も巻込んで、asobi基地も併設して、子どもたちのいる場で大人が真剣に子どもの人権を考えます。その延長にフューチャーセッションの展開もあるかもしれません。

 

プロフィール
小笠原 舞(おがさわら まい):1984年生まれ。企業に就職後、保育現場へ。保育士を務めるかたわら、こどもたちのより良い未来を目指して、こども未来プロデューサーとして活動を始める。2012年夏より始めた子育て支援コミュニティ『asobi基地』は、多くの人々に支持され、今やほぼ毎週末イベントを開催。2013年6月には、フリーランス保育士の小竹めぐみ氏と共に『合同会社こどもみらい探求社』を立ち上げるなど、常に新しいチャレンジをし続けている。
 
 
聞き手・構成・文/有福英幸(OUR FUTURES編集長)

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